最新記事

女性問題

男女格差ランキング120位は本当? 「女性が差別される国」日本で男より女の幸福感が高い皮肉

2021年4月18日(日)16時45分
本川 裕(統計探偵/統計データ分析家) *PRESIDENT Onlineからの転載
男女格差のイメージ

ronstik - iStockphoto


最新の「ジェンダーギャップ指数」によれば日本の男女不平等ランキングは156カ国中120位。統計データ分析家の本川裕氏は「マスコミは女性がひどく差別される国=日本という論調ですが、国連の『ジェンダー不平等指数』では162カ国中24位で、米英などより順位は上でした。また日本の男性より女性のほうが一貫して幸福度が高いという調査もあります」と指摘する――。

「日本はひどく女性が差別される国」は正しいのか

日本の男女不平等ランキングは、156カ国中120位......。

3月31日、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」が作成した「ジェンダーギャップ指数」の最新データが公表された。「経済」「教育」「政治参加」といった分野での男女格差を指数化したものだ。日本の男女不平等の総合ランキングが156カ国中120位で、突出した男性優位社会(女性差別社会)という結果をマスコミ各社は大きく取り上げ、社説のテーマにした新聞もあった。

ただ、統計を専門とする私としては、奇妙に感じることがある。それは国連の専門機関の一つである国連開発計画(UNDP)が毎年刊行する人間開発報告書で作成されている「ジェンダー不平等指数」の結果はあまり報じられないのに、この世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」は公表されるたびに必ず報道され、話題となることだ。

これは「ジェンダーギャップ指数」のほうが日本の男女平等度のランキングがずっと低く(女性差別社会)、その分、目立っていて取り上げやすいからだろう。

「ジェンダーギャップ指数」の2021年報告書における順位は上述のように156カ国中120位であり、前回2019年報告書の121位(153カ国中)に引き続き、非常に低い順位だった。

ところが、国連開発計画「人間開発報告書」の2020年版における「ジェンダー不平等指数」では24位(162カ国中)となっており、女性差別社会とは言えない結果になっている。

reuters__20210418161230.jpg

図表1は、G7諸国における両指数の順位を比較したものだ。「ジェンダーギャップ指数」では最下位の日本も「ジェンダー不平等指数」では5位と英国と米国を上回っている。日本以外のG7諸国の順位も両方でばらばらである。日本だけでなく参考に掲げた韓国も「ジェンダーギャップ指数」では世界順位100位以下とランキングが低い点が目立っている。

日本は女性差別国か否か「指標によって、結果が異なる理由」
なぜ、このようなランキングの差が生じるか。その背景に指標のとり方の違いがある。例えば......。

・世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」では、大臣の男女比率や管理職比率など政治・経済分野のウエートが高い。
・途上国の社会開発を使命とする国連開発計画の「ジェンダー不平等指数」では女性がどれだけ安全に出産できる環境かを重視しており、「妊産婦死亡率」や「未成年出生率」などの指標が入っている一方、世界経済フォーラムには入っていない。同フォーラムはその代わり、「新生児の男女比率」と「健康寿命の男女差」を健康分野の指標としている。
・日本の「新生児の男女比率」は1位、「健康寿命の男女差」は72位。

以上の傾向からしても、私は、同フォーラムが出産リスクや寿命そのものはスルーして、健康の男女格差をこの2つの指標(「新生児の男女比率」「健康寿命の男女差」)で代表させるやり方に大きな疑問符をつけたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中