最新記事

感染症対策

新型コロナウイルス、重症化する人としない人は「口の中」が違う 歯科医推薦、免疫力高める「7秒うがい」とは

2021年1月24日(日)15時20分
照山 裕子(歯学博士、東京医科歯科大学非常勤講師(顎義歯外来)) *PRESIDENT Onlineからの転載

口のなかで激しい水流をつくらないと、歯ぐきや歯の隙間、のどの奥のばい菌やウイルスは洗い流せません。逆にいえば、「強さ」さえ意識してやれば、短時間でもしっかり効果のあるうがいができるということです。小さなお子さんからお年寄りまで、だれでも気軽にできて、しっかり効果のあるうがい。

それが後述する「7秒うがい」なのです。

「7秒うがい」は全身の健康を守る

口のなかが汚いと、感染症のリスクが高まるだけにとどまりません。近年、口のなかの環境と、全身の健康との間に強い相関関係があることもわかってきました。

その数、じつに100を超える疾患に関与しているといわれています。口のなかが汚い人は、大腸がん、心臓や脳血管疾患、アルツハイマー病など、重大な病気にかかりやすいのです。これは、汚い口のなかで繁殖した歯周病菌などが全身に回り、あちこちで悪さをするためです。

7秒うがいを習慣化すると、口のなかが清潔に保たれ、国民病ともいわれる歯周病、そして歯周病が引き起こす、さまざまな病気の予防に役立ちます。水だけでカンタンにできて、どれだけたくさんやってもデメリットがまったくない7秒うがい。

ぜひあなたも今日から実践して、口から健康な体を手に入れてください。

新型コロナウイルスは、口のなかにばい菌が多い人ほど重症化しやすい

前述したように以前から、医師の間では、「口のなかが汚いと、インフルエンザになりやすい、重症化しやすい」というのが常識となっています。

実際、奈良県で行われた調査では、介護施設の高齢者に歯磨きなどの口腔ケアを徹底したところ、インフルエンザの発症率が10分の1に激減したという報告があります。

新型コロナウイルスについては、口のなかにばい菌が多い人ほど重症化しやすいことがわかってきています。そして新型コロナウイルスはインフルエンザと異なり、唾液腺や歯ぐき、舌など、口のなかで増えることも明らかになりました。

コロナウイルス関連の論文は通常より早いスピードで学術雑誌に掲載されていて、どんどん新しいデータが出てきています。そしてそのなかには、新型コロナに感染して重症化した人と、重症化しなかった人の口のなかのばい菌の数を比べてみると、100万倍くらいばい菌が多かったという結果もあったそうです。

もちろん、まだ因果関係のすべてが明らかにされたわけではありません。ただ、口のなかを清潔に保つことが、感染症リスクを低下させることは間違いないでしょう。

舌が白く汚れている人は、感染症の重症化リスクが高い

なぜ、口のなかが汚いと感染症に弱くなるのか。

これは、おもに歯周病菌が原因です。歯周病菌は歯と歯ぐきの隙間の「歯周ポケット」とよばれる場所のほか、舌の表面のデコボコのなかにもたくさん潜んでいます。

とくに、舌が白く汚れている人は、感染症の重症化リスクが高いといわれています。汚い口のなかでは、歯周病菌が繁殖してしまいます。歯周病菌というと、歯周病や口臭など、口のなかのトラブルに限定したばい菌だと思っている人も多いかもしれません。

しかし、歯周病菌はあなたの想像以上に、体にさまざまな悪さをします。たとえば、歯周病菌はプロテアーゼという「タンパク質を破壊する酵素」を出します。プロテアーゼは口やのどの細胞や粘膜を攻撃するので、歯周病菌だらけの口のなかは、つねに傷だらけです。

newsweek_book210124.pngウイルスが私たちの体内に侵入するとき、まず細胞の表面にあるレセプター(受容体)という分子に結合します。口やのどなどのレセプターは通常、粘膜を保護する糖タンパク質の層におおわれているのですが、プロテアーゼなどの酵素によってこの層が壊されると、レセプターがむき出しになり、ウイルスが侵入しやすくなってしまうのです。

また、歯周病菌はノイラミニダーゼという、インフルエンザウイルスの増殖を助けてしまう酵素も生み出します。歯周病菌が多いと、インフルエンザウイルスが増殖しやすい環境になってしまうのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェーSWF、ガザ関連でさらに6社投資除外

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアの「冷酷な」攻撃非難 「訪米

ワールド

イラン、協力停止後もIAEAと協議継続 「数日中に

ワールド

米特使、イスラエルはレバノン和平計画に従うべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中