最新記事

日本社会

人生切り売りする生き方、辞めませんか? 40代独身男性、生活費8000円の田舎暮らしのススメ

2020年1月17日(金)19時30分
池滝 和秀(ジャーナリスト、中東料理研究家) *東洋経済オンラインからの転載

1カ月の生活費が約8000円、引っ越してきた2019年4月以降ごみを出したことがないという40代の男性。生活不安が高まる時代の中、彼は田舎でどのような暮らしを送っているのだろうか?

老後資金が約2000万円足りなくなるとの金融庁の報告書が波紋を広げた2019年。生活不安は高まりばかり。だが、「1カ月の生活費は約8000円で、4月に引っ越してきて以来、ごみを捨てたことがない」と、さりげなく話す40代の男性のような生活を送る人もいる。

生活費が安いので賃金を稼ぐための仕事に就く必要性はない。
「何をやるかの基準は楽しいか、楽しくないか」
こんな生活も今の日本では可能と聞けば、少しは安心できるのではないだろうか。

「時間売る生活にうんざり」

男性は都内の新聞配達会社で20年間勤務し、営業や労務管理などの仕事に就いていた。給料は決して高くなく、外食やコンビニ弁当の購入、友人や知人との飲み代などで月の支出は15万~20万円に上った。自分の時間を切り売りするような生活の中で、頭に浮かんだのは、小さい頃から憧れていた田舎暮らしだった。
「おばあちゃんが田舎に住んでいて夏休みは楽しかった記憶しかない。それに対して東京での生活はつまらなかった」

だが、夢を抱きつつも20年の歳月が過ぎた。
「やろうと思えばできたかもしれないが、踏ん切りがつかなかった」
金銭的な問題や、田舎で実際に暮らしていけるのかという不安が付きまとった。だが、最後には「もうこれ以上は我慢できない。自分の心にうそはつけない」という思いが打ち勝った。

男性が今住んでいるのは三重県津市から車で1時間ほど走った場所にある山に囲まれた集落。ここに移り住む前には、松坂市に家賃が月2万円の平屋を借り、家探しや田舎暮らしの準備を進めた。そこでは、七輪でご飯を炊くなど生活費を抑えることに成功し、田舎暮らしに向けた手応えを感じ取ったという。

数カ月かけて見つかったのは、100万円台の築約100年の平屋の古民家。独身で子どももいない男性にとっては十分な広さだった。高台にあるために日当たり良好な敷地内の畑では、大根やジャガイモ、人参、レタスなどの葉物野菜やパクチーがすくすくと育っている。みそなどの調味料も手作りし、コメ以外の食料品を買うのは月に1回程度。取材に訪れたのは12月20日だったが、「今月に入って買い物にはまだ行っていない」と話す。

移住とともに所有していた自動車も1万円で売り払った。これにより、支出は大きく減った。考えたのは、自動車を維持するためには、働く必要性が生じるということだった。

「突き詰めて考えてみると、働きたいのか、自動車に乗りたいのか、だった。働いてまで自動車に乗ることは魅力に感じなかったため、自動車のない生活を選択した」
近くのスーパーまでは、スポーツタイプの自転車をこいで約1時間。帰りは坂がきついため、1時間半近くかかるが、苦にはならないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イスラエルがイランに大規模攻撃、体制転換視野に

ワールド

中国、イラン攻撃の即時停止要請 米・イスラエルに懸

ワールド

再送-米軍トップと国防長官、トランプ氏私邸からイラ

ワールド

〔情報BOX〕米・イスラエルがイラン攻撃、国際社会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKIが語った創作と人生の覚悟
  • 3
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキングが発表に...気になる1位は?
  • 4
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 7
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 8
    トランプがイランを攻撃する日
  • 9
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 10
    「最高すぎる...」アリサ・リウの帰国便に同乗した客…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中