最新記事

キャリア

ネット時代だからこそ重要な、ビジネスパーソンの「学び直し」

2019年1月25日(金)10時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

日本人の能力開発は世界最低レベル ooyoo-iStock.

<グローバル化とAI化の時代を生き抜くために、現役ビジネスパーソンは何をすべきか。まずは「知識」を得る方法を変えよと、元外交官のコンサルタントは言う>

グローバル化とAI(人工知能)化は、今後ますます日本のビジネスパーソンにとって脅威になる。そう言われても、戸惑う人は少なくないだろう。頭では分かっていても、目の前の仕事に追われる毎日の中で、どう対処すればいいか分からない。

1853年にペリーの黒船が来航し、それからわずか15年で260年続いた江戸幕府が滅んだ。当時「江戸幕府は未来永劫続くとほとんどの人が思い込んで」いたが、現在も同様で、多くの日本人が「『まあ、なんとかなるでしょう』とグローバル化とAI化の動きをさほど深刻にはとらえていない」と、元外交官で、グローバルリーダー開発を本業とするトレーナーの山中俊之氏は言う。

これまで4万人に及ぶ国内外のリーダーやその候補と、研修やコンサルティング、大学講義、グローバルビジネス、外交の現場で向かい合ってきた山中氏によれば、手立てはある。「自らの人材としての開発戦略を大きく変え、自らの市場価値を上げ、世界に通用する人材に」なるために、6つの習慣を身につければいいというのだ。

山中氏は新刊『世界で通用する「地頭力」のつくり方――自分をグローバル化する5+1の習慣』(CCCメディアハウス)の中で、その6つの習慣を現役世代のビジネスパーソンに向けて体系立てて説明している。6つの習慣とはすなわち、「情報」「知識」「ワークスタイル」「コミュニティ」「オフ」「英語」を"変える"ことだ。

これらを"変える"とは、どういうことか。ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第1回は「第2の習慣 『知識』を変える」より。

◇ ◇ ◇

社会人になってから学び続けない日本人ビジネスパーソンの能力開発は世界最低レベル


一流といわれる大学を卒業して一流といわれる企業や官庁に勤務している人の話を聞くと、日常業務に埋没して能力開発に時間を割けていない様子がよく見受けらます。長年の低成長時代に人員削減が行われ、マネジメントクラスは忙しすぎて、そのような余裕がない状況に置かれていることも要因です。自主的に勉強することをせず、研修も受け身、それなのに居酒屋では上司への恨み言......。そんなビジネスパーソンや公務員が残念ながら多いのです。

日本のビジネスパーソンが学んでいないことはデータでも裏づけられています。大学入学者の中で社会人経験があると推定される25歳以上の割合は、日本は2%程度であり、OECD諸国の平均が20%程度であるのと比較してはるかに低くなっています(文科省およびOECD資料)。この数値から、大学卒業後に大学や大学院に入って学び直す人が少ないことがわかります。

また、企業研修においても、米国の大企業では1人あたり平均1000ドル以上かけることが多いといわれる一方で、産労総合研究所によると、日本では4万円台とされます。このように世界水準で見ると日本人ビジネスパーソンの能力開発への投資は大変に遅れているという事実をまず認識することが重要です。

特別背任で有罪になり、服役した経験を持つ大王製紙前会長の井川意高氏は、次のように述べています。

「私が持つ知識の量は、東大時代が人生のピークだったと思う。社会に出てからは、アウトプットするばかりでインプットする時間があまりにも乏しかった」(堀江文・井川意高『東大から刑務所へ』幻冬舎)

その反省から獄中でたくさんの本を読んだとのことです。日本では、勉強とは大学や高校までの学生時代に行うもの、という感覚がまだまだ強いのではないでしょうか。過去の学歴が大事なのではなく、今どんな新たな知識を身につけて成長をしているかです。知識のバージョンアップが求められているのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ブラジル大統領、G7サミットに参加へ カナダが招待

ワールド

米、対中55%関税維持 中国との合意後も「変更なし

ビジネス

米5月CPI2.4%上昇、前月からやや加速 関税措

ワールド

トランプ関税、高裁審理中は維持へ 差し止め一時停止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中