最新記事

キャリア

ネット時代だからこそ重要な、ビジネスパーソンの「学び直し」

2019年1月25日(金)10時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「インターネット時代だからこそ知識が重要」という認識が弱い

インターネットでほとんどの知識を得られるので知識を有することは意味がなくなったという意見をよく聞きます。これは日本だけでなく、世界中でいわれていることです。単なる丸暗記は意味がないという程度の意味であれば賛成です。しかし、知識は不要という意味であれば反対です。

たとえば、イスラム原理主義者によるテロを考える際、イスラム教に関する知識がないと何も議論できないのは明白です。インターネットで短時間検索した程度では正確、かつ深い知識を得ることはできません。原理主義的な考えを持つイスラム教徒の中でも、テロに走る人はごくごく一部です。そのことを知らないと、大きな偏見を持ってしまいかねません。

ここでいう知識とは、短期的で動的な情報に対して、長期的で静的なものを指します。そもそも情報と知識の区別には絶対的なラインがあるわけではなく、相対的である点には注意が必要です。新聞やテレビ、ソーシャルネットワークが情報、良質な書籍や大局的な視点を持った実務家・専門家の知見などが知識です。新聞でも長期的な視点を与えてくれる知識もある一方、書籍の中には一時的な価値しかないものもあります。

インターネットで多くの情報や知識が入手できる、デジタル革命といわれる変革の時代であるからこそ、知識がますます重要になっています。その理由を改めて整理しておきたいと思います。

第一に、さまざまな情報が錯綜する中で、コアとなる知識が定着していないと判断を誤ることが挙げられます。これは1章でも言及したとおりです。

たとえば、人類にとって大きな課題であるエネルギーの安定供給問題。原発については賛否両論ありますが、太陽光など再生可能エネルギーに関しても、蓄電で安定供給ができるという意見から、コスト高や供給量の不安定さのため安定供給は困難という見解までさまざまです。

この点について判断するには、エネルギー問題やエネルギーが経済に与える影響についてのコアとなる知識と、それに基づく洞察が不可欠であることはいうまでもありません。

第二に、スピード化する現在では、瞬発力の前提として知識が求められるからです。ビジネスの現場では瞬時に何らかの仮説を立てる必要に迫られます。たとえば、IoT(Internet of Things)に関する知識がないと、クライアントとの打ち合わせでビジネスモデルに関する臨時の仮説を立てることができず、話を進めることすらできないでしょう。

◇ ◇ ◇

こうした現状分析の後、本書で提唱されるのは「森羅万象に好奇心を持ち学ぼうとする習慣」「そのジャンルで異端とされる本を読む習慣」「外国の映画・ドラマを戦略的に見る習慣」「STEMを学ぶ習慣」「知識を深め、見識に高めるための『対話』の習慣」......。既存の知識に加えて、新しい知識をいかに学ぶかが問われる時代を生き抜くためのアドバイスだ。

※第2回:オフはとにかく休みたい、会話は仕事の話ばかり、という日本人


 『世界で通用する「地頭力」のつくり方
 ――自分をグローバル化する5+1の習慣』
 山中俊之
 CCCメディアハウス

<この記事は2018年3月19日掲載記事の再掲載です>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中