最新記事
BOOKS

【大河「べらぼう」5分解説③】戯作で蔦重を支えた朋誠堂喜三二の「黄表紙」の世界

2025年4月29日(火)11時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
手柄岡持 (朋誠堂喜三二)

『吾妻曲狂歌文庫』 より「手柄岡持 (朋誠堂喜三二)」 宿屋飯盛撰・ 北尾政演(山東京伝)画 1786(天明6)年  東京都立中央図書館蔵

<道蛇楼麻阿(どうだろうまあ)、手柄岡持(てがらのおかもち)など、粋でユニークな狂名で活躍した朋誠堂喜三二の生涯と作品たち>

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』では、飄々としていながら、絶妙なタイミングで的確なアドバイスを蔦重に与え、魅力的なキャラクターとして描かれる朋誠堂喜三二(尾美としのり)。

本記事では、今後も長く蔦重を支え、江戸のメディア王へと押し上げていくであろうキーパーソン・喜三二について紹介していく。

本記事は書籍『Pen Books 蔦屋重三郎とその時代。』(CEメディアハウス)から抜粋したものです。

※蔦屋重三郎 関連記事
神田伯山が語る25年大河ドラマ主人公・蔦屋重三郎「愛と金で文化・芸能を育てた男」
【「べらぼう」が10倍面白くなる!】平賀源内の序文だけじゃない! 蔦重が「吉原細見」にこめた工夫
作家は原稿料代わりに吉原で豪遊⁉︎ 蔦屋重三郎が巧みに活用した「吉原」のイメージ戦略

◇ ◇ ◇

江戸の人気マルチ作家・朋誠堂喜三二

江戸時代には、大田南畝や山東京伝など、複数のジャンルを跨いで、才能を発揮するマルチな作家が多くいた。

朋誠堂喜三二もそのひとりである。喜三二は幕府寄合衆の家臣・西村氏の三男として、1735(享保20)年に生まれた。その後、秋田藩江戸詰の平沢家の養子となった。

本名は平沢常富(つねまさ)であり、喜三二は数ある筆名のひとつである。

newsweekjp20250423101235-2a3b365d634381c824fdba727135c9bd6f84fd79.jpg

1784(天明4)年頃には留守居役筆頭を任ぜられるなど、秋田藩江戸屋敷の重役へと昇進しつつ、早くから文才に秀で、蔦重とも多くの作品を作っている。

しかし、時の政権を茶化した『文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくどうし)』が問題視され、戯作から手を引くこととなった。その後は、手柄岡持(てがらのおかもち)の狂名で、1813(文化10)年に亡くなるまで、狂歌に没頭したという。

newsweekjp20250423101436-78ce193ddef163905b0c853a78f11310a0d6d0c3.jpg

『娼妃地理記(しょうひちりき)』 道蛇楼麻阿(朋誠堂喜三二)作 1777(安永6)年 国立国会図書館蔵
遊女屋を郡に、遊女を各地の名所に見立てた遊女評判記。地理書のパロディとなっている。作者の道蛇楼麻阿(どうだろうまあ)は、朋誠堂喜三二の数ある筆名のうちのひとつ。

newsweekjp20250423102022-bd6bc5518b1ab1c552306b50fb5fcfa416f2cac8.jpg

『文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくどおし)』朋誠堂喜三二作・喜多川行麿画 1788(天明8)年正月 国立国会図書館蔵
11代将軍・徳川家斉を幼い源頼朝に、老中・松平定信を頼朝の側近の畠山重忠に見立てて、時の政治を面白おかしく風刺した黄表紙。朋誠堂喜三二は本書をきっかけに主君の秋田藩主佐竹侯から執筆活動の禁止を命じられてしまう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍のポーランド増派を示唆 ナブロツキ

ワールド

トランプ氏「プーチン氏に伝言なし」 4日にゼレンス

ワールド

日・EUなどとの貿易協定「解消」も、関税裁判敗訴な

ビジネス

米経済活動、大半でほぼ変化なし 物価上昇は緩やか=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中