最新記事
BOOKS

性描写もお涙頂戴もない「どんでん返し製造機」、現役医師ベストセラー作家のサスペンスは面白いのか

The Twist Machine

2025年2月28日(金)11時55分
ローラ・ミラー(スレート誌コラムニスト)
米作家のフリーダ・マクファデン

フリーダ・マクファデンは脳障害の専門医の仕事を続ける傍らサスペンススリラーのジャンルでも活躍、次々とベストセラーを世に送り出してきた PHOTO ILLUSTRATON BY SLATE. IMAGES VIA FREIDAMCFADDEN.COM AND ©MIRA WHITING.ーSLATE

<『ハウスメイド』などで知られる米人気作家、フリーダ・マクファデン。ベストセラーを連発するが、ワンパターンが命取りになりかねない。読者はどう読んでいる?【レビュー】>

フリーダ・マクファデン(Freida McFadden)のスリラーの世界には一見「完璧」な人々と暮らしがあふれている。裕福で「ものすごくハンサム」な夫たち、身ぎれいで「非常に美しい」妻たち、巨大なペントハウスやマンション。それに革張りのソファ、しかもたくさんのソファだ!

マクファデンの代表作である『ハウスメイド(The Housemaid)』(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)は、最初の語り手が誰だか分からない。彼女はおぞましい光景が待ち受けている上の階に向かった刑事が、彼女が腰掛けている「焦げたキャラメルのような色のイタリアンレザー」の高級ソファに目を留めただろうかと考える。


マクファデン通なら分かるとおり、本作もほとんどはヒロインが語り手だが、この最初の語り手は十中八九別の人物だ。ボストン在住の現役医師がマクファデンというペンネームで執筆したスリラー小説はこれまでに23作品、販売部数は合計600万部を超える。最初は2013年にアマゾンで自費出版、現在は独立系出版社ソースブックスなどとの従来型出版でベストセラーを量産している。

読者の興味を引くため、マクファデンのスリラーは大抵、虐殺の現場で幕を開ける。死体、逮捕、闇の中で語り手に忍び寄る殺人者。それから物語の冒頭、事件の数日か数週間か数カ月前に戻って、ごく普通の人々(メイド、高校講師、看護師)か、一見「完璧な」人々の身に起きた経緯を解き明かす。

いずれの場合も、ヒロイン自身も大きな秘密を抱えていて、何章にもわたってほのめかした末に、最後にはうっかり漏らしてしまう。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中