「私たちが客に恋すると思うわけ?」元ストリッパーが見たアカデミー賞期待作『アノーラ』のリアル

A Sex Worker’s Take on “Anora”

2025年2月21日(金)16時18分
リスドン・ロバーツ(元ストリッパー)

「結局は男性視点」か

でも、私が話を聞いたセックスワーカーの中には、アニーの格闘シーンについて別の見方をする人もいた。

ロサンゼルス在住で元コールガールのミアは「彼女が殴られるシーンは、私たちセックスワーカーが実際に受けている暴力の真実そのもの」だとした上で、「あれがコメディーの要素として描かれていたことに、正直言ってぞっとした」と語った。


同じくロサンゼルス在住のセックスワーカーであるテラも、あのシーンを見て、ベイカー監督も結局は「男」なんだと思ったと言う。

「脚本も監督も男でしょ。いろんな人がアドバイスしたとは思うけど、結局は男目線で撮られた映画。そんなの、うんざりするほど見てきた」

実際、男性がセックスワーカーの気持ちを理解するのは(その人自身がセックスワーカーでない限り)難しい。だから本来なら、私たちセックスワーカーが私たち自身の映画を撮るべきだ。現に自主制作の映画はある。でもメジャー映画では皆無に等しい。

だからベイカーのような監督は貴重な存在──なのだけれど、正直言って『アノーラ』のラストシーンはいただけない。あそこでアニーに恋愛感情があるのは不自然で、どう見ても映画会社の要望で無理に付け加えたとしか思えない。あんなのは私たちのハッピーエンドじゃない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中