最新記事
音楽

アカデミー賞はスルーしたが、映画『チャレンジャーズ』の音楽は最高傑作...「もっと高く評価すべきだった」

Unforgivable Oscar Snub

2025年2月12日(水)14時50分
レベッカ・オニオン(スレート誌記者)
タシ(ゼンデイヤ)

タシ(写真)とアート、パトリックの三角関係を音楽で見事に表現 AMAZON MGM STUDIOSーSLATE

<今年のゴールデングローブ賞作曲賞を受賞しているのにノミネートすらされないとは...。『チャレンジャーズ』の果敢な挑戦について>

テニスコートでは、女子ジュニア選手のタシ(ゼンデイヤ)が対戦相手を完膚なきまでにたたきのめし、観客席では、男子ジュニアのダブルスを組むアート(マイク・フェイスト)とパトリック(ジョシュ・オコナー)がそれを食い入るように見ている。タシのプレーを初めて目の当たりにした2人は、すっかり魅了されていた。

テクノサウンドが緊迫感を高めるなかで、カメラはコート上のタシと観客席の2人を短い間隔で交互に映し出す。アートとパトリックは、タシの強烈なプレーに全く同じタイミングで思わずのけぞる。


私は昨年、ルカ・グァダニーノ監督の映画『チャレンジャーズ』を女性だけのグループで見に行った。コートでタシが奏でる音楽に合わせてダンスするかのように、アートとパトリックが同時にのけぞった瞬間、私たちは映画館で喜びと驚きで涙を流して大笑いしたものだ。これこそが映画だ!と、私は思った。

ところがアカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーの面々は、優れた作品を理解する力がないらしい。1月23日に今年のノミネート作品が発表されたが、『チャレンジャーズ』は1部門もノミネートされなかった。脚本賞はもとより、作曲賞や歌曲賞の候補にもなっていない。

音楽を担当したトレント・レズナーとアッティカス・ロスは、同じ作品で今年のゴールデングローブ賞作曲賞を受賞しているのに、ノミネートすらされないとは......。

スポティファイで大人気

映画の出来がどれくらい音楽に依存しているかが映画音楽の評価基準だとすれば、『チャレンジャーズ』でのレズナーとロスの仕事ぶりは、ノミネートの段階をすっ飛ばして、いきなり受賞してもいいくらいだ。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

医薬品メーカー、米国で350品目値上げ トランプ氏

ビジネス

中国、人民元バスケットのウエート調整 円に代わりウ

ワールド

台湾は31日も警戒態勢維持、中国大規模演習終了を発

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中