最新記事
野球

大谷翔平をベーブ・ルースやテッド・ウィリアムズなどの過去の名選手たちと比べたら?

PUT THE BALL IN PLAY!

2024年10月2日(水)17時37分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)
大谷翔平をベーブ・ルースやテッド・ウィリアムズなどの過去の名選手たちと比べたら?

8月28日、大谷は愛犬デコピンと始球式をした直後、今シーズン42本目の本塁打を放った WALLY SKALIJーLOS ANGELES TIMES/GETTY IMAGES

<打撃専念で素晴らしいシーズンとなった大谷翔平、往年の名選手たちと通算成績の指標から比較して見えてきた違いとは?>

私と家族が暮らすボストンでは、5月初めでも野球をするにはまだ寒い。ボールを打つと、バットを握る手がジーンとする。

それでもレッドソックスは、憎きヤンキースをフェンウェイ・パークに迎えていた。打席には、ボストンのヒーローである強打者デービッド・オルティスが立っている。


その日も、病院のベッドで父が試合を見ていた。彼は1940〜50年代にニューイングランド・インダストリアル・ベースボールリーグというセミプロのタフなリーグで、投手をしていた(といっても試合そのものより、試合中の数々の乱闘騒ぎの話をして、そのときの傷痕を見せるのを楽しんでいたが)。

テレビがオルティスの打席を映していたから、すぐには父と話せなかった。しばらくして父は「おいおい」といつもの口調で言った。「オルティス。役立たず。スラッガーは三振ばかり。ボールを前に転がせ」

父はその夜、90歳で亡くなった。走者をコツコツ進め、ボールを「前に転がす」という「スモールボール」こそ野球の理想像であり、打者の優劣を判断する基準にもなり得ると、彼は信じていた。

父がプレーしていた75年前から、そして亡くなった15年前からでさえ、野球は変わった。打者はボールを「前に転がす」より、フェンス越えを狙って思い切りバットを振り回す。三振をしても誰もとがめない。「ロングボール」のドラマは観客を興奮させ、金をもたらす。

データを統計学的に分析して野球のありようを変えた「セイバーメトリクス」の専門家らも、走者を進めるスモールボールより本塁打を打ったほうが得点につながると言う。父も私も、この見方は信じていない。

大谷翔平は、スモールボールとロングボールの両方の要素を兼ね備えた選手だと思う。彼は高い打率で走者を進め、同時に長打も放つ。衝撃的な身体能力と、殿堂入りも確実な技術がそれを可能にしている。

大谷が偉大な選手であることは確かだ。だが過去の名選手と比べてどうなのか。それは野球ファンなら誰もが好む、正解のない楽しい話題だ。

大谷を1920年代から現在までに殿堂入りした主な選手たちと比較してみよう。まず、ベーブ・ルース。選ぶ理由は、ルースがそうではないと証明されるまでは史上最高の選手だから。2人目はテッド・ウィリアムズ。40〜50年代に活躍した選手で、しばしば史上最高の打者と言われる。

次にウィリー・メイズ。50〜70年代の選手で、史上最高のオールラウンドプレーヤーの1人だ。そしてカール・ヤストレムスキー。60〜80年代に活躍し、私の幼い頃のヒーローだ。最後にリッキー・ヘンダーソン。史上最強の盗塁王である。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中