最新記事
映画

「伝説のデカ」が復活! 30年ぶりの新作『ビバリーヒルズ・コップ』が取り入れた「革命的な視点」とは?

Axel Foley 30 Years Later

2024年8月2日(金)16時09分
ダン・コイス(スレート誌記者、作家)
エディ・マーフィー演じるデトロイト市警の刑事アクセル・フォーリー

一匹狼の刑事だったアクセルは今や地元市民のマスコット的存在に MELINDA SUE GORDON/NETFLIX ©2024

<エディ・マーフィーをスターダムに押し上げた大ヒット映画シリーズ最新作『アクセル・フォーリー』は、80年代映画の派手な魅力で観客を「懐かしのムード」に──(レビュー)>

コメディアン・俳優のエディ・マーフィーが、映画『ビバリーヒルズ・コップ』のおかげで手にした名声の大きさは、どれほど強調しても足りないほどだ。

アメリカで1984年12月に公開されたこの作品は、翌年3月まで13週連続で興行収入ランキング首位を維持し、その年に最も稼いだR指定映画の座を獲得した。


主人公の型破りなデトロイト市警の刑事、アクセル・フォーリーを演じたマーフィーは、出身番組『サタデー・ナイト・ライブ』にホストとして凱旋。著名写真家アニー・リーボビッツが撮影を担当した音楽アルバムも発表した。

『ビバリーヒルズ・コップ』は、主演俳優を見どころとするタイプの映画の最高傑作の1つだ。早口で繰り出す鋭いジョーク、頭の回転と威勢のよさ、クールさというマーフィーの魅力を披露する舞台として、設計されている。

それと同時に、80年代映画ならではのタフな「一匹狼の刑事」の象徴に、マーフィーを仕立て上げた。

もはや英雄でない警察

ストーリーは、殺人犯を追ってカリフォルニア州ビバリーヒルズに単身で乗り込んだアクセルが、地元刑事らに規則破りの威力を示すというもの。彼は令状なしに倉庫に侵入し、命令に背き、麻薬密輸人である敵を倒すためにしでかした不法行為を見事に取り繕ってみせる。

堅苦しいルールにとらわれない「正しい」警察活動は世のためになるというメッセージは、続編2作にも引き継がれている。

『ビバリーヒルズ・コップ2』(87年)で、アクセルは前作で親しくなった刑事2人、ビリー・ローズウッド(ジャッジ・ラインホルド)とジョン・タガート(ジョン・アシュトン)と共に、官僚主義の警察署長との対決を迫られる。

『ビバリーヒルズ・コップ3』(94年)では、悪役であるシークレットサービスの特別捜査官とテーマパークの警備主任を機関銃で打ち倒す。

第3作公開から30年がたった今、映画の中の警察描写は激変した。そんな時代によみがえったのが、7月初めにネットフリックスが配信開始したシリーズ最新作『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』だ。

警察の勇敢さではなく、欠陥に光を当てようとする現代、本作はシリーズで初めて「革命的」な視点を取り込んでいる。警察が嘘をつき、不正を覆い隠すのは悪いことなのではないか──。

アクセルはもはや刑事というより、地元で愛されるマスコット的存在だ。早速、お決まりの銃撃戦とカーチェイスが始まり、アクセルはまたも騒動を引き起こす。彼は時代遅れの刑事かもしれないが、それ以外に生きる道がない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中