最新記事
スポーツ

俳優が買収し、2年連続でリーグ昇格...奇跡の英古豪サッカークラブ、レクサムを知ってる?

2024年7月15日(月)18時55分
コリン・ジョイス(本誌コラムニスト、在英ジャーナリスト)
レクサムAFCの選手たち

フットボールリーグ2への復帰を決めたレクサムAFCの選手たち(昨年4月) ACTION IMAGESーREUTERS

<大金持ちがオーナーになっても、飽きて放り出したり、よい結果が出なかったり。だがロブ・マケルヘニーとライアン・レイノルズは、サッカー界の「おとぎ話」を創り出した>

「まだまだ日本人が知らない 世界のニュース50」英ウェールズの古豪サッカークラブ、レクサムAFCの復活を、誰もが「おとぎ話」と評する。だったらハリウッド俳優のロブ・マケルヘニーとライアン・レイノルズは、おとぎ話の「演出家」だ。

2人は2021年にレクサムを買収しオーナーに就任。低迷していたクラブを22~23年シーズンに、プロリーグとされるフットボールリーグ2(4部に相当)へ15年ぶりに復帰させ、翌23~24年にはリーグ1(3部)に昇格させた。


2人はクラブの知名度も信じ難いほどにアップさせた。ホームゲームの観客数は3倍に増え、スタジアムでは米人気コメディアンのウィル・フェレルの姿も目撃された。しかもディズニープラス配信のドキュメンタリー『ようこそレクサムへ』のおかげで、ファンは世界中に広がっている。

【予告編】レクサムAFCの知名度を高めたドキュメンタリー『ようこそレクサムへ』

ウェールズの守護聖人を祝う今年3月1日の聖デービッド・デーには、ウィリアム英皇太子がスタジアムを訪れ、ユニフォームを贈られた。破産寸前となり、1864年からの本拠地であるスタジアムをオーナーが売却しようとした20年前とは大違いだ。

ウィリアム英皇太子のスタジアム訪問の様子 The Prince and Princess of Wales-YouTube

著名人がオーナーになることについて、初めは疑う声も多かった。大金持ちがサッカークラブを買収し、運営に口を出すものの、しばらくすると飽きて放り出す例はたくさんある。熱心なオーナーが多額の投資をしても、うまくいかないこともある。

だが2人のオーナーはクラブの長期的な計画に的確な指示をしただけでなく、賢明で気前のいい投資を行った。試合には頻繁に足を運び、選手や監督、地元コミュニティーとも関係を築いた。ファンと同じくらいクラブを大切にしているように見えるオーナーは、ファンの人気も高い。

レクサムの躍進には限界があるだろう。最高峰のプレミアリーグ入りは、まず無理だ。それでも世界最古のサッカーチームの1つがフットボールリーグに復帰しただけでなく、ウェールズの町レクサムが市民の誇りとなり、再び存在感を示すようになった。

おとぎ話の例えに戻るなら、レクサムは王子様と結婚はできないだろうが、舞踏会に出席するところまでは来た。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ダライ・ラマ、後継者計画を発表へ 90歳の誕生日控

ワールド

インドの対米通商交渉、農業は「譲れない一線」=財務

ビジネス

飲食料品の値上げ、7月は2105品目で前年比5倍=

ワールド

米上院、税制・歳出法案の審議進める 30日に修正案
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    メーガン妃への「悪意ある中傷」を今すぐにやめなく…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 7
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 8
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 9
    突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中