最新記事
海外ドラマ

無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイちゃん』...予想外の大ヒットはなぜ?【ネタばれ注意】

Tale of an Obsession

2024年5月16日(木)14時55分
イモジェン・ウェストナイツ(作家、ジャーナリスト)

ドニーは必ずしも好感が持てる人物ではない。身の毛もよだつような状況の犠牲者であるにもかかわらず、彼の自滅的な決断に、これ以上は共感できないと思う視聴者もいるだろう。

しかし、最後まで見た私の心に残っているのは、マーサの描き方だ。

愛くるしいベビーフェイスのイギリス人女優ジェシカ・ガニングはこの役にぴったりで、ドニーがすぐにマーサの恐ろしさを見抜けなかったのも無理はないと思えてくる。

他人の体のファスナーを開けて中に自分をしまいたくなる、つなぎみたいにあなたを着たい──そんなことを言われているのに。

もっとも、ドラマとしてストーカーを単に異常な悪役として描くのは簡単だ。しかし、『私のトナカイちゃん』は違う。

マーサの行動はぞっとさせられることも多く、本当に許し難くなるときもある。例えば、ドニーのガールフレンドを襲って髪を引き抜き、彼女が外国人だと決め付けて人種差別的な暴言を吐く。

ドニーは次第に、マーサがそんなふうに振る舞う理由に興味を持ち始める。嫌がらせが自分の両親に向かい、ようやく警察に相談するが、脅迫の証拠が必要だと言われ、マーサからの何千件という異常な留守電メッセージを確認しなければならなくなる。

それでもマーサが自分と両親に肉体的な危害を加えると脅した証拠を見つけ、被害届を出し、裁判でマーサは有罪判決を受ける。ところが、ドニーは留守電メッセージを聞くのをやめようとしない。彼女の本当の気持ちを知りたくなったのだ。

全てはあの1杯から...

クライマックスに向けて、ドニーは精神的に追い詰められていく。かつて自分を虐待した性加害者を訪ねて共演することに同意し、パニックの発作を辛うじて抑え、通りがかったパブに入る。

そして、まだ聞いていなかった留守電メッセージの1つを再生したとき、ある疑問の答えをついに知る──マーサはなぜ、自分を「私のトナカイちゃん」と呼び続けたのか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック反落、軟調な経済指

ワールド

米、イラン産原油積載タンカー拿捕を検討 圧力強化へ

ビジネス

米フォード、第4四半期は111億ドルの最終赤字 E

ビジネス

リフトの四半期利益見通し低調、25年は営業赤字 株
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 5
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    台湾侵攻を控えるにもかかわらず軍幹部を粛清...世界…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中