最新記事
映画

米で興収振るわず、ネットで「いよいよ死に時か」...『エクスペンダブルズ ニューブラッド』老優たちの熱演が最高

Twilight of the ’80s Action Gods

2024年1月12日(金)20時35分
ジョディ・ローゼン

『エクスペンダブルズ ニューブラッド』

新たに加わった仲間たち YANA BLAJEVA ©2023 LIONSGATE

われらがヒーローたちは情け容赦なく、問答無用で正義の鉄ついを下し、時に簡潔な決めぜりふを吐く。銃弾が飛び交い、手榴弾のピンが抜かれる。スタローンとステイサムのベテランコンビに、今回は少し若い仲間やアジア系の戦士も加わっている。たぶん多様性への配慮というやつだ。

世界観は、例によってロナルド・レーガンがアメリカ大統領だった80年代のもの。言い換えれば『ランボー』が大ヒットした時代だ。悪役たちは国籍不明で、戦闘はグローバルサウスで展開され、CIAに雇われた正義の軍団は現地の環境や人命を考慮せずに火を放ち、暴れまくる。

言うまでもないが、真面目な映画ではない。ひたすらコメディーであり、所々に気の利いたせりふがあり、あとは超暴力的で豪快なアクションの連続だ。誰かが胸を撃たれて死ぬなんて退屈な場面はない。その代わり機関銃の一斉射撃で男の上半身は粉々に吹き飛び、残った2本の脚だけが直立していたりする。ここまで来ると不気味さを通り越して笑える。

今の時代、ここまで壮絶な茶番劇はめったに見られない。あの『マトリックス』シリーズはもちろん、2022年の『トップガン/マーベリック』にさえ独自の世界観があり、映画的なこだわりがあった。

だが『エクスペンダブルズ』は違う。場面設定はシンプルで、せりふは短く、すぐに血と炎のらんちき騒ぎが始まる。筋書きもCGもお粗末だが、それこそがファンサービス。アクションが全てだ。

この痛快さと暴力性、面白さの詰め合わせにはモデルがある。アジア、とりわけ香港の偉大な「武侠映画」の伝統だ。ただし本作の老優たちにジャッキー・チェンのような超絶技巧を期待するのは、まあ高望みというものだ。

骨董品としての面白さ

それでもこのシリーズは無邪気に笑える。そこが最大の魅力だろう。加齢にあらがう老優たちの熱演は、いつ見ても楽しい。今回も、出会い系サイトで見つけた女性を喜ばせるために、御年66歳のラングレンが間抜けなサーファー風の髪形を披露している。

この老優軍団にハイテク兵器は不要。年代物のピックアップトラックやポンコツのプロペラ機が似合う。一応、高性能な銃器も携行しているが、いざとなれば鉄拳で勝負するのが常だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

支援物資待つガザ住民51人死亡、イスラエル軍戦車が

ワールド

貿易協議で合意の可能性あるが日本は「タフ」=トラン

ワールド

ウクライナ首都などに大規模攻撃、15人死亡 純粋な

ワールド

台湾、ウクライナで実戦投入のドローン技術導入へ 中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中