最新記事

アカデミー賞

今年のアカデミー賞候補はハズレなし! 一方で過去の「駄作」候補は...

Good Movies in a Bad Year

2021年4月9日(金)17時41分
ダン・コイス(スレート誌エディター)

210406P52mank_SAK_05.jpg

『Mank/マンク』 NETFLIX


往年の映画ファンにとっては『Mank/マンク』がたまらないだろう。ハリウッドの歴史を扱った過去の作品と比べても、極めて質が高い。『シカゴ7裁判』は、ヘビーな問題を軽く描いた作品だが、弁護士を演じたマーク・ライランスのカツラだけでも、ノミネートする価値がある。

『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、賛否両論を招くだろう。批判派は駄作だと言うかもしれないが、この種のリベンジ物語に求められるカタルシスが用意されている。

過去にも『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や『プレシャス』『スリー・ビルボード』など、一大傑作でも駄作でもないが、「議論する価値のある映画」が作品賞候補になってきた。こうした作品は、毎年1本はあってもいいと思う。

興行収入を無視した評価

それにしてもなぜ、今年はこんなにいい作品ばかりがノミネートされたのか。

筆者の推測では、大きな理由は3つある。第1に、コロナ禍のために、興行収入という作品評価の大きな要因がなくなり、『ジョーカー』や『ボヘミアン・ラプソディ』といった駄作がノミネートされなくなった。これまでは駄作を選んでいたアカデミー会員も、その興収がよければ、「自分には見る目がある」と主張ができた。だが、20年は数億ドルレベルの興収を上げた作品がゼロに近かったため、その可能性が消えた。

第2に、映画会社が例年のようにカクテルパーティーなどを開いて、アカデミー会員に盛んに売り込みができなかったことが、落ち着いた映画の評価につながったようだ。

例えば、『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』は、19年に作品賞を受賞した『グリーンブック』のように、米国社会の分断が単純な問題ではないことを描いたが、アカデミー会員たちは映画そのものの質があまり高くないという冷静な判断を下したようだ。

あるいは、メリル・ストリープやニコール・キッドマンなど大スターを起用したド派手なミュージカル映画『ザ・プロム』は、やはりド派手なキャンペーンが行われていたら作品賞候補に入っていたかもしれない。だが、自宅でストリーミング配信で見た会員たちは、あまり感心しなかったようだ。いい判断だ!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、8月は5.4万人増 予想下回る

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー

ワールド

ウクライナ支援の有志国会合開催、安全の保証を協議

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中