最新記事

ブランド

アメリカ極右が愛するダークヒーローとは? 勝手なイメージ利用に不快感

The Punisher Goes Rogue

2021年4月2日(金)16時21分
ジョン・ジャクソン
過激な極右(イメージイラスト)

ILLUSTRATION BY ALEX FINE FOR NEWSWEEK

<米連邦議会議事堂を襲撃した過激集団に愛用されてイメージ悪化に頭を抱える企業が続出>

マーベル・コミックスが厄介な問題に直面している。それも、どちらかといえばB級キャラクターである「パニッシャー」のブランドイメージに関する問題だ。

パニッシャーは、マーベルのコミックに登場するヒーローの中でも珍しく冷酷なキャラとして知られる。かつてはアメリカの海兵隊員だったが、家族を惨殺されたのを機に、悪者たちに死の裁きを与えるダークヒーローに変わった男なのだ。

マーベルの悩みの種は、そんなパニッシャーが今年1月、ワシントンの米連邦議会議事堂になだれ込んだ暴徒たちの間で熱狂的に支持されていることだ。昨年の米大統領選でドナルド・トランプ大統領が敗北したことを認めず、選挙結果を承認する手続きが行われている議事堂を襲撃し、5人の死者を出す騒動を起こした連中だ。

暴徒たちは、トランプ選対の公式グッズである赤いMAGAハットや、「トランプ2024」という横断幕と共にアメコミのロゴを身に着けていた。なかでも多かったのが、パニッシャーのトレードマークである黒地に白いどくろのロゴだ。

ネットフリックス制作のドラマ『Marvel パニッシャー』に主演した俳優ジョン・バーンサルは、「(連邦議会を襲撃した)人々はだまされ、敗北して、恐れている。それは(パニッシャーが)体現する理念とは全く異なる」と、ツイッターで不快感をあらわにした。

ファンの間では、いっそパニッシャーというキャラクターをお払い箱にしてはどうかという声もある。パニッシャーの生みの親であるコミックライターのジェリー・コンウェイも、「その可能性を考えることもある」と語った。「キャラクターに問題があるわけではなく、アメリカ社会の現在の状況を考えるとね」

だがマーベルは何度も映画化されている『パニッシャー』のリブート版を企画中ともいわれ、具体的なコメントを出すことは拒否している。

自社ブランドの知的財産権が侵害された場合、コピー商品のメーカーや小売店を相手取って裁判を起こすことはできる。だが人気商品であるほど、いたちごっこになる可能性は高い。ウェブ雑誌ザ・ファッション・ロー(TFL)のジュリー・ザーボ編集長は、「例えばナイキが20の模倣品販売ウェブサイトを訴えても、差し止め命令が出るまでの間に新たなサイトが20できているだろう」と語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 5
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中