最新記事

ジョンのレガシー

ジョン・レノンが暗殺の直前に語った家族と反戦とビートルズ【没後40周年特集より】

2020年12月23日(水)11時00分
本誌米国版編集部

NW_SAI_10.jpg

自然体でくつろぐジョン JEFF GOODEーTRONTO STAR/GETTY IMAGES

――新曲のうち、「アイム・ルージング・ユー」には以前のような毒があるが......。

ジョン あれは押しつぶされそうな喪失感から生まれた。ある夜、ヨーコに全然電話が通じなかったことがあって、完全に断絶した気持ちになった。なぜこの5年が必要だったのかというと、それは自分を取り戻すためだったと思う。自分が何者かを思い出したのは香港にいたときだ。

僕はヨーコに勧められて、一人になるために世界中を回っていた。20歳のときから何一つ自分ではしていなかったから、ホテルのチェックインの仕方も知らなかった。これを読んだら、「このポップスター野郎!」って思われるだろうね。彼らは、取るに足らない人間の気持ちなんて分からない。

僕は気を落ち着かせたいときは風呂に入るんだが、香港では40回も風呂に入った。そして、ぼんやり海を眺めていて気付いたんだ。このくつろいでいる男こそ、ずっと昔から本当の「僕」だったんだ、と。「彼」は物事をどう進めたらいいのか知っている。称賛やレコードの売り上げに依存する必要はない。ワオ! そしてヨーコに電話して言ったんだ。「誰だと思う? 僕だよ!」

夜明けに香港の街をほっつき歩いた。一人でね。とてもスリリングだった。おばさんたちと一緒にスコットランドの山を歩いていた幼い頃に持っていた感情を再発見していたんだ。木々や霧......。僕は思ったよ、アハ!ってね。この感情こそが書いたり描かせたりするものだと。それは僕の人生にずっとあったものだ。

こうして僕はビートルズから自由になれた。ずいぶん遠回りしたけれど、僕はビートルズ以前もジョン・レノンだったし、ビートルズ以後もジョン・レノンであり続ける。それでいいんだ。

【本誌米国版1980年9月29日号掲載記事を再録】

20201215issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

12月15日号(12月8日発売)は「ジョンのレガシー」特集。悲劇の死から40年。「20世紀のアイコン」が残した音楽・言葉・思想。[独自]暗殺直前インタビュー収録

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

法人企業統計、7─9月期設備投資は前年比2.9%増

ビジネス

ハセットNEC委員長、次期FRB議長に指名なら「喜

ワールド

英財務相、予算案巡り誤解招いたとの批判退ける 野党

ワールド

トランプ氏、ホンジュラス前大統領を恩赦へ 麻薬密売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中