最新記事

私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】

韓国にパンブーム到来、ソウルの「日本のパン屋」に突撃取材した

VISITING JAPANESE-STYLE BAKERIES IN SEOUL

2020年2月21日(金)15時20分
朴順梨(ライター)

magSR20200221korean-bakeries-4.jpg

韓国人経営の「匠や」は生食パンの専門店で、日本の高級生食パン店と店の雰囲気もパンの価格も違わない PARK SOON-I

青い鳥から約2.5キロ離れた孔徳地区にある「匠や」では、生食パン1種のみを扱っている。値段は2斤9000ウォン(約840円)で、日本の高級生食パンとほぼ同じだ。

オーナーの金淵勲(キム・ヨンフン)は高校から社会人になるまで、現代建設に勤める父親の都合で日本に住んでいた。東京韓国学校から上智大学に進学した彼が当時ハマっていたのは、ラーメンの食べ歩きだ。

「ちょうどとんこつブームの頃で、友達と『とんこつ友の会』を作っていた。環七(環状七号線)沿いのラーメン店を巡っているうちに、料理が好きになって」

magSR20200221korean-bakeries-5.jpg

「匠や」の外観 PARK SOON-I

卒業後は日本で就職したものの、2000年に兵役のため帰国。徴兵特例制度により、国が指定する企業で働く代替服務者となった。そこで現在彼が「メンター」と呼ぶ、株主の日本人男性と出会い、日本への関心をさらに深めていく。2004年に退社し、ソウル市内にとんこつラーメン店の「博多文庫」を開いた。

その頃は韓国に、とんこつラーメンの店がほぼなかったことが理由だ。生食パン店を始めたのも「日本でヒットしている生食パンが、韓国にもあったら」と思ったから。

2018年11 月にオープンした「匠や」の店内には、食パンだけが並んでいる。個別包装して飾られているスライスパンは、文具やシャツのようにも見える。程なくして、近所に住んでいるというヤン・ジョハが、5歳になる娘のイアンを連れてやって来た。

「会社の仲間が差し入れてくれたのがきっかけで、好きになった。柔らかくて新鮮なので、トーストせずそのまま食べるのが定番だ」

20代の頃は日本の豊田通商に勤務していたというヤンとは、日本語で会話をした。父親のそんな様子をイアンは、不思議そうに見つめていた。

magSR20200221korean-bakeries-6.jpg

「匠や」で個別包装して飾られているスライスパン PARK SOON-I

日韓悪化で売り上げ減

青い鳥も匠やも、それぞれに固定客をつかんでいることが分かる。しかしいずれも2019年夏以降、苦しい思いをしていると告白した。

金は自身の店が韓国企業であることと、日本と関係は深いが正しい歴史認識を持っているということを示すため、日本軍慰安婦被害者支援団体に寄付していると店内に明記している。それが顧客への誠意だと考えているからだ。しかしそれは、日本と韓国が親しくしていくことを願う気持ちの表れでもあるという。

「日本にお世話になってきたし、日本人のお客さんもいる。おいしいものは世界共通だから、日本人が好きなものは韓国人も好きなはず。分かってもらえる日まで、よいと思うものを作り続けていくだけ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

トランプ減税・歳出法案、下院最終採決へ前進 手続き

ワールド

米EU関税問題、早期解決を メルツ独首相が訴え

ワールド

仏航空管制官がスト、旅行シーズンに数百便が欠航
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中