最新記事

インタビュー

「撃たれやすい顔」を検知する「銃」──現代美術家・長谷川愛とは何者か

2019年8月14日(水)16時20分
Torus(トーラス)by ABEJA

"Human X Shark""鮫はその漢字からも読み取れるように、魚類でありながら交尾器を持ちさまざまな繁殖様式を持つ。更にはある種のサメは有性生殖も単為生殖も可能だ。人間もバイオテクノロジーの発展した未来では同性間での生殖や単為生殖も可能だと言われている。私にとってサメは「未来のテクノロジーを使いこなす野性的で強い女性」を象徴する憧れの生物。今回はサメのメスに化ける為に、特殊な材料を用いてオスザメを魅惑する香水をつくれるのか?という挑戦となった。"(Ai Hasegawaより)


スペキュラティブデザインとの運命的な出会い

2012年、英国王立芸術大学院(RCA)に入学し、スペキュラティブデザインに出会う。これが長谷川さんの方向性を決定づけた。

大学院の先輩や同級生は、ぶっ飛んだ作品を生み出していました。

技術を使って亡くなった人の遺伝情報を木に入れて墓標にするプロジェクト、人間の歯を草食動物に変える作品、蜂を使ってガンを見つけようとするプロジェクト....どれも見たことのない作品ばかり、示唆に富む、新しいものの見方を提示していました。

入学してから2年間、スペキュラティブデザインの提唱者の1人、フィオナ・レイビー教授に師事しました。作品をつくる時に徹底的に科学的かつ社会的なリサーチをするのは、彼女からの指導で身に着けたものです。

私にとって科学はいわば、宗教の替わりに希望を見出した新たな「ファンタジー」です。科学は新しいものの見方を提示してくれるもの。だからこそ、間違った方向で使われてほしくないし、真摯に研究をされている科学者に迷惑もかけたくない。そのためにしっかりと科学的リサーチを行うんです。

スペキュラティブデザインを学んだ長谷川さんは、2014年に渡米しMIT メディアラボで研究を深め、衝撃的な作品を発表していく。インタビュー後編ではアートプロジェクトが生まれる起点となるものや、作り上げていくプロセスに迫る。

※インタビュー後編はこちら:「性欲はなぜある?」が揺るがす常識 現代美術家・長谷川愛が示す「未来」

長谷川 愛
静岡県出身。アーティスト、デザイナー。生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーを経て英国王立芸術大学院でMA取得。マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボに留学後、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員。『(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合』が第19回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞。

取材・文:山下久猛 写真:西田香織 編集:錦光山雅子

※当記事は「Torus(トーラス)by ABEJA」からの転載記事です。
torus_logo180.png

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中