最新記事

エンターテインメント

デーブ・スペクター「吉本」「日本の芸能事務所」「テレビ局との癒着」を全て語る

2019年7月26日(金)17時55分
小暮聡子(本誌記者)

日本のテレビが好きだからこそ警鐘を鳴らす、というデーブ・スペクター

<吉本興業が揺れているが、これは吉本だけの問題ではない。日米の芸能事務所の違いにも詳しいデーブ・スペクターに独占インタビューした。「日本のテレビが面白くないのは、素人が多過ぎるから」そして「今は、日本の芸能界を変える最後のチャンス」>

日本最強のお笑い系芸能事務所である吉本興業が揺れている。「闇営業」問題をメディアで報じられ、会社から沈黙を命じられた芸人の宮迫博之と田村亮が先週、突然反論の記者会見を実施。会社上層部から圧力の存在を明かした。

問題は闇営業を超え、社長の発言から垣間見える芸人へのパワハラや所属事務所側の「搾取」、契約書の不在など拡散している。これは吉本興業、あるいは日本の芸能界特有の問題なのか。日本社会全体の問題ではないのか。

米ABCテレビの元プロデューサーで、子役としてアメリカで活躍した経験も持つタレントのデーブ・スペクターに本誌・小暮聡子が聞いた。

――今、吉本興業という企業をどう見ているか。

世界にはない企業だ。お笑い芸人を中心として、6000人もタレントを抱える芸能事務所というのは世界を見渡してもどこにもない。アメリカにもコメディアンは多いが、1つのエージェントに所属するタレントは多くて20~30人だ。

日本は、お笑いの文化が非常にユニーク。大阪そのものがお笑いの街として認知されていて、一般の人にも笑いをとれる話術と話芸がある。大阪弁自体が面白くて、お笑いに最高の方言だ。その、お笑いの街で生まれたのが吉本だ。そういう意味ではとてもユニークな会社だと言えるだろう。

大阪だけでなく東京や各地にいくつも専用の劇場を持っていて、お笑いだけでこれほど手広くやっている大企業は、日本だけでなく世界を見渡しても吉本だけだ。愛されていることは間違いない。戦前からの古い歴史があってここまで大きくなった。企業そのものとしてはリスペクトされてもおかしくない。

――今、吉本興業が企業として問題視され、若手の収入が低いことや、契約書の不在、上層部のパワハラとも言える発言が取り沙汰されている。これらに関してはどのように見ているか。

まず、日本の芸能事務所は異質で、アメリカなどとは全く違う。その中でも、吉本自体がさらに異質だ。日本の芸能事務所というのは、給料を月給制か歩合制にして、タレントを雇っている立場だ。タレントを商品として所属させ、営業といって売り込んで、事務所側がそのギャラの何割かをもらうというシステムだ。

アメリカは逆に、(モデル事務所は例外だが)基本的にはタレントや役者が自分でマネジメント(日本でいうマネージャー)を雇っている。どこかの事務所に入ったとしても、日本のように事務所が月給を支払うことはない。タレントには映画会社やテレビ局から直接ギャラが支払われ、タレントがそのギャラの中からエージェントにだいたい10%くらいを払う仕組みだ。弁護士もいるし、金額まで全てオープンにしている。

日本はどんぶり勘定的で、基本は事務所がギャラの本当の額をタレントに言わない。ギャラから何パーセントかを事務所が差し引いた額がタレントに支払われるという歩合制か、もしくはフラットな月給制だ。まだあまり売れていない人は月給が多いのだが、少し売れ始めると歩合になる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国が首脳会談要請、貿易・麻薬巡る隔たりで米は未回

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対

ワールド

アングル:インドでリアルマネーゲーム規制、ユーザー

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中