最新記事

日本

日本の神様の名前は、なぜ漢字なのか、どんな意味があるのか

2019年6月19日(水)12時19分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

漢字から浮かび上がる神様の個性

日本という国を創った「国生みの神」であり、夫婦でもある「いざなぎのみこと」と「いざなみのみこと」は、漢字では「伊邪那岐命」「伊邪那美命」と書く。

漢字本来の成り立ちから、それぞれの意味は次のとおり。「伊」は天地の間を調和する人格、「邪」はアンバランスなこと、「那」はたっぷり多いという意味、「岐」は枝分かれした山路、そして「美」は、ふくよかで神に捧げるに相応しい犠牲としての羊のことを言うそうだ。

kanjibook190619-chart1.png

イラスト:髙安恭ノ介(『漢字で読み解く日本の神様』130ページより)

kanjibook190619-chart2.png

イラスト:髙安恭ノ介(『漢字で読み解く日本の神様』131ページより)

一方、音という点で見れば、「伊邪(いざ)」は相手を誘うときや呼びかけるときの言葉であり、「那岐(なぎ)」は「凪」と同音なので穏やかで静かであることを表し、「那美(なみ)」は「無」で無くすことを意味するという。

そして、多くの神様の名前にも使われている「命」は天からの使命を意味するので、つまり、天と地を調和する夫婦で一対の(=アンバランスな)神様であり、「伊邪那岐命」は人の世を安定させる神様、「伊邪那美命」は人の命を無くす神様ということになる。

実は、伊邪那岐命と伊邪那美命は夫婦としてたくさんの神様を生み、日本という国土に必要な全てのものを造ったが、火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ/火の神様)を生んだ際に負った火傷が原因で、伊邪那美命は亡くなってしまう。そして、人の死を司る神様となったのだ。

人間の生と死を創った神様、それが「伊邪那岐命」「伊邪那美命」だ。漢字の意味や成り立ちを丁寧にひもとくことで、神様の個性だけでなく、背後にあるストーリーまでもが浮かび上がってくる。

名前に込められた深い意味を知る

伊邪那美命が亡くなったとき、妻を忘れられない伊邪那岐命は黄泉の国まで迎えに行くが、その身体は腐ってウジが湧いていたという。それを見た伊邪那岐命は逃げ戻り、穢れを落とすために禊ぎを行った。このときに生まれた神様のうちのひとりが「天照大神(あまてらすおおみかみ)」だ。

kanjibook190619-chart3.png

イラスト:髙安恭ノ介(『漢字で読み解く日本の神様』18ページより)

『古事記』などで国家の主神とされている神様であり、人々に偉大な自然の恵みを与えてくれる太陽の神様だ。4つの漢字で表されているのは、「人の頭上に大きく広がり(天)、地上のすみずみまで光を注ぐ(照)、たっぷりとゆとりのある(大)、不思議な自然の力(神)」。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反発、アマゾンの見通し好感 WBDが

ビジネス

米FRBタカ派幹部、利下げに異議 FRB内の慎重論

ワールド

カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブルージェ

ビジネス

NY外為市場=ドル/円小動き、日米の金融政策にらみ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中