最新記事

話題作

アデルとレアをカンヌが大絶賛

最高賞のパルムドールを受賞したレズビアン映画『アデルの人生』の魅力

2013年6月14日(金)15時15分

はまり役 性描写も含め、演じたのがエグザルコプロス(右)とセドゥだからこそ成功した Eric Gaillard-Reuters

 先週のフランス南部は愛に満ちあふれていた。同性婚合法化に伴い、男性同士の初の結婚式がモンペリエで行われ、その直前にはカンヌ国際映画祭でレズビアンのカップルを描いた『アデルの人生』(アブデラティフ・ケシシュ監督)が最高賞のパルムドールを獲得した。

 同作は前評判も高く、審査員の満場一致で受賞が決定。人気グラフィックノベルを原作に、15歳の高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)と、年上の美大生エマ(レア・セドゥ)が恋に落ち、やがて別れを迎える数年を描いている。

 評論家らの注目を集めたのは中身そのものより、女同士の濃密な10分間ものセックスシーン。のぞき見趣味、ポルノという批判もあり、「監督のあそこが画面に見えた感じ」と語る女性批評家もいた。原作者ジュリー・マローも「ポルノ」「私を落ち着かない気分にさせた」「ばかばかしい」とブログで批判した。

 しかし審査員長のスティーブン・スピルバーグは「これは素晴らしいラブストーリー。だから私たちには、こっそりと見るのが恥ずかしいことではなく、特別なことに感じられた」と称賛。その性描写も含め、エグザルコプロスとセドゥだからこそ卓越した作品に仕上がったと指摘した。「配役がちょっとでも違えばうまくいかなかっただろう。感性豊かな映画監督の完璧な選択だ」

 パルムドールの発表では例年は監督のみのところ、ケシシュと共に2人の名前が呼ばれた。本来なら女優賞も与えたいという審査員の思いからだ(カンヌでは、最高賞と他の賞が重複できないという規則がある)。

 新進女優のエグザルコプロスは知名度が一気にアップ。受賞後は「みんなに寛容というものを示せたらうれしい」と語った。

 セドゥは憂いを含んだ瞳と丸っこい鼻が印象的なフランスの若手注目株。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』などハリウッド作品にも出演し、最近では仏映画『マリー・アントワネットに別れをつげて』で、アントワネットに思いを寄せる朗読係を演じた。

 彼女がインタビューで語ったところでは、セックスシーンは作り物の性器を着けて臨んだという。困ったのは観客席に父親を見つけたときだ。「父は『すごく良かった。あのシーンは見なかったけど』って言って、私も『もちろん見なくてよかった』。『ああ、見なかったよ』『見なかったわよね』って......」

 体当たり演技も、1人の娘としてはやはり恥ずかしいものか。

[2013年6月11日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、大型減税法案可決をアピール アイオワ州

ワールド

IMF、スリランカ向け金融支援の4回目審査を承認

ビジネス

ドイツ銀、グローバル投資銀行部門で助言担当幹部の役

ビジネス

ドイツ自動車対米輸出、4・5両月とも減少 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中