最新記事

インタビュー

東大卒プロゲーマー「ときど」を世界一に変えた1冊の本

2021年5月10日(月)11時15分
朴順梨(ライター)

mentalbook20210507invu_3.jpg

Photo: 遠藤 宏

――どうやって答えを導きだしたのですか?

最初は時間が解決してくれるのかなとか、自分で決断を下せるようになるのかなとか考えたし、いろいろな人の話を聞いたり相談したりしましたが、これは周りの人の時間を浪費させただけで本当に意味がなかった。

だって「プロゲーマーになるか、公務員になるか」という問い自体が、バカげていたから(笑)。でも2010年頃は、ウメハラさん以外にプロはほぼいなかったから、「プロになりたい」って相談したら、ゲーマーほど反対したんですよ。

「お前は良い学校に行っているから分からないかもしれないが、ゲーセン通いなんて人に言える趣味ではない」とか言われて。

本当は周りに背中を押してもらいたかった。でもあまりに止められるから、大学院の休学届を出してから1年ぐらい悩みました。100人に相談しても、2~3人ぐらいしか「ゲーマーになれば」と言ってくれない。でもそのうちの1人が、父親だったんですよ。

――大学教授の。

父には勝手に怖いイメージを持っていたのですが、過去のことを聞いたら「ミュージシャンになりたかったのを、泣く泣く断念した」と言っていて。自分がチャレンジできなかった分、息子の背中を押してくれたんでしょうけれど、ビックリしましたね。

でも「お前なんかが公務員になっても、周りに迷惑をかけるだけだ」って言われたんですよ。それを聞いて「俺のことよく分かってるな」って(笑)。

人間的に成長しないと、ゲームはうまくならない

――プロになって迎えたスランプを経て、どう変わりましたか?

スランプを迎えるまでは、並行していくつものタイトルをプレイして、どれかが大会上位に引っかかればいいと思っていました。

でも僕が勝てない人たちは1つのゲームに絞って、じっくりキャラクターと向き合っている人ばかりだったので、僕もそうしなければという決断をさせられました。

『ストリートファイター』シリーズはキャラによって体力差がありますが、それが逆に面白い点でもあります。

ゲームが進化する中でキャラクター特性もどんどん修正されているので、ただ勝てればいいと思ってキャラをどんどん乗り換えていくと、自分の練り上げた武器がない状態になってしまう。でも自分なりにキャラを選んでずっとプレイしていけば、その人だけの戦い方が作られていきます。

こうした「プロとして戦うなら、自分ならではの武器が大切だ」という見方が出来るようになったのは、わりと最近のことですね。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅続落、米金利上昇や中東情勢警戒 「過

ビジネス

午後3時のドルは154円前半で高止まり、34年ぶり

ビジネス

台湾TSMC、1─3月純利益は5%増か AI半導体

ビジネス

第1四半期の中国GDPは予想上回る、3月指標は需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 5

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 8

    イスラエル国民、初のイラン直接攻撃に動揺 戦火拡…

  • 9

    甲羅を背負ってるみたい...ロシア軍「カメ型」戦車が…

  • 10

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中