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米国で高校生eスポーツが本格始動――IT業界注目の新興企業がその舞台を提供

2019年02月04日(月)15時45分
寺町幸枝

(写真はイメージ) gorodenkoff-iStock

<世界中で事業が盛り上がり2020年には15億ドル市場に伸びると予想されているeスポーツが、米国で昨年秋から高校の公式スポーツとなった>

2018年秋、米国の高校スポーツ界に、新たな風が舞い込んだ。全米州立高校協会(NFHS)が、eスポーツを公式スポーツ種目として認めたのだ。これにより、これまでスポーツとは縁のなかった子どもたちがクラブ活動に従事できると注目されている。

NFHSネットワークのCEOで、最近までNFHSのスポーツディレクターだったマーク・コスキは、2019年1月のシーズンでは18〜20州の高校がeスポーツ州チャンピオン大会を開催し、2万5000人の学生が最初のシーズンに参加と語っている(米インク誌)。

なお、NFHSが持つ放映ネットワークを通じて、全国大会はライブストリーミング中継され、すでにその規模は米国を代表するアメフトやバスケットボール級だ。

2020年には15億ドルのビジネスに達するというeスポーツ

eスポーツの最大の魅力は、一人でプレイするのではなく、チームで勝ちを狙うという点だ。大学におけるeスポーツはすでに規模が拡大しており、ゲームやeスポーツを専門にしている調査機関のNewzooの発表によれば、2017年のeスポーツ事業の収入は6億9600万ドル(約760億円)に上るという。そして2020年には、15億ドル市場(約1600億円)に伸びると言われている。

調査会社ニールセンの調べによると、2017年の時点で、世界規模でeスポーツを楽しむファンの数は、約3億人に達し、そのうちミレニアル世代が1億5000万人いるとみられている。

このような広がりを見せるeスポーツ業界で一際注目されているのが、カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とするIT新興企業、プレイ・バーサス(PlayVS)社だ。オンラインゲームのプラットフォームを提供する企業として着々と資金調達に成功している。

今回の高校生向けeスポーツの公式プラットフォームを提供する企業がプレイ・バーサスだ。先述のマーク・コスキによると、「数あるeスポーツパートナー候補者の中でも、プレイ・バーサスは、教育的視点からなるコンセプト、ミッション、そしてヴィジョンのあらゆる面でピカイチだった」と話す。

ネット知らずで育ったIT企業創業者

そんなプレイ・バーサスを率いるのは、若干26歳のファウンダー(創設者)でCEOのダレン・パーネルだ。インク誌の記事に、「インターネットやコーディングなどとは無縁の世界で育った。なぜなら持ってなかったから」と語ったパーネル。彼の人生は、まさにアメリカンドリームを地で行くようなものだ。

デトロイトのギャングが取り仕切る町で育ったパーネルは、「ほとんどの友達は、すでに死んでしまったか、牢屋にいる」と話す。しかし、13歳で携帯電話販売店の掃除のアルバイトを始め、そこからビジネスを体で学び、高校卒業するまでに、3つの携帯電話販売店を経営するようになったという。その後、ミシガン大学へ進学するも事業と学業のバランスが取れず中退する。

グルーポンのビジネスモデルに感銘を受けたことをきっかけに、IT分野へ急激に興味を持ったパーネルは、次々とIT関連の仕事をしながら業界について学んでいった。同時にIT関係者を集めたミートアップイベント(同業社交流会)を、地元デトロイトで頻繁に主催するようになったという。

デジタル専門メディアのモグルドムによると、その頃すでにアフリカ系アメリカ人ベンチャー・キャピタリストとして、全米で最年少の一人として知られていた。こうしたイベントを通じ、さらに人的ネットワークを広げていった。高速インターネットを扱う企業と仕事をすることを通じてeスポーツに魅了され、2015年に起業。eスポーツに可能性を見いだし、この分野での新しい競技リーグを立ち上げようと画策した。

その後、足を運んだパーティーで、ベンチャー・キャピタルファーム「サイエンス」の代表であるピーター・ファムとの出会いをきっかけに、現在の事業のアイデアを話したところ意気投合し、ファムの出資を受けて、ロサンゼルスでプレイ・バーサスを起業することになったという。

今回同社は、高校生向けeスポーツ公式プラットフォームとしてのシーズン価格は、登録料が、1プレイヤー64ドル(約7000円)と定めた。インク誌によれば、これは各校にとって、1生徒に対して、1ヶ月16ドル(約1700円)の負担となるという。またプレイ・バーサスの収入は初年度から200万ドル(約2億2000万円)に上る見通しだという。

昨年11月、短期間で数回の資金調達に成功し、パーネルは消費者向けのインターネットビジネスの世界において、アフリカ系アメリカ人として異例の3005万ドル(約33億円)という大資本企業の経営者となった。(事業投資のデータベース、クランチベースによると、現在事業が運営されているアフリカ系アメリカ人がCEOの不動産関連企業「コンパス(Compass)」と「カドレ(Cadre)」の資本額はそれぞれ2500万ドルと1830万ドル。)

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