JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
WHY THAT PRICE
コメに限らず「日本の食品流通の事業者数が多い」ことは、「食品流通を担う各プレーヤーの利益率が非常に低い」というデメリットにつながっているのであり、事業者数が多いことで消費者価格が非常に高くなっている、という事実はない。
日本ほど、多様な食文化が地域ごとに存在する国はなく、食関連の事業者数が多いことはむしろ地域の食文化を守っている、という面があることを忘れないでほしい。
確かに今回、一部のコメ卸が利益を大きく伸長させたのは事実だ。例えば、上場企業である木徳神糧(東京)の25年1〜3月期の営業利益は前期比347.7%増だった。
しかし決算書類を見ると、それだけ利益が増えても同社の売上高純利益率は3.5%だ(前期は1.1%)。大手スーパーも含め、日本の食品流通関連企業は非常に低い利益率で事業を行っている。
今回のコメ価格高騰で、多くの農家が「ちょっとだけ一息つけた」と感じているが、コメ卸業界もこれとほぼ変わらない状況だ。
農水省の統計によれば、22年と23年において需要に対する供給のマイナスは合計約65万トンあった。ちょうど同じだけ民間在庫量も減少している。24年に若干供給がプラスになった分と合わせると、この3年間で積み上がった需給ギャップは約60万トン。
江藤拓前農水大臣による31万トンに加え、今回の小泉進次郎大臣によるプラス30万トンの備蓄米放出によって3年間の需給ギャップがちょうど埋まることになる。これで、価格が上昇し続ける直接原因は解消された。