世界2位のコメ輸出国になれたはずなのに...日本農政の「不都合な真実」

A DRASTIC REFORM

2025年6月18日(水)17時36分
山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

 

消費者にも農業にも利益があるのに、減反が廃止できないのは、なぜだろうか。減反は農協の発展の基礎だからだ。

既得権益にメスを入れる時

減反で米価を高く支持したため、零細な兼業農家がいまだに多く残っている。兼業農家は農業所得の数倍に上るサラリーマン収入をJAバンクに預金する。

農地を宅地などに転用・売却した利益も預金され、預金量100兆円を超すメガバンクに成長。減反で米価を上げて兼業農家を維持したことと、農協が銀行業などを兼業できる日本で唯一の法人であることが絶妙に絡み合い、農協の発展をもたらしてきた。


構造改革とは農家の選別政策だ。規模拡大による構造改革を行えば農村全体の所得は向上するが、農家戸数が減少するので農協は政治的にも経済的にも基盤を失う。減反廃止で唯一被害を受けるのは農協だ。この既得権を打破できるか。今こそ、政治の決断が必要だろう。

ただし、既に2025年産のコメの作付けは終わっているので、今年コメの価格を下げるために供給を増やそうとすれば、輸入するしかない。

そのためには、日本がWTO(世界貿易機関)で約束しているミニマムアクセス米77万トンのうち主食用米10万トンの輸入枠を拡大して、供給量を増やすことだ。1キロ当たり341円の関税を半分程度に削減することも確実に米価を引き下げるだろう。

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