世界2位のコメ輸出国になれたはずなのに...日本農政の「不都合な真実」

A DRASTIC REFORM

2025年6月18日(水)17時36分
山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

newsweekjp20250618014734.jpg

世界最大のコメ輸出国インド・ムンバイの商店 INDRANIL ADITYAーNURPHOTOーREUTERS

コメは、世界で4億8000万トン作られ、トウモロコシや小麦に次ぐ穀物だ。しかし、コメの貿易はほかの穀物と事情が大きく異なる。

コメの3大輸出国はインド、タイ、ベトナムで、世界の輸出量の約7割を占める。これらの国では、国際価格が上昇すると、輸出量が増え、国内供給量が減少して国内価格も上昇するので、貧しい消費者の生計が苦しくなる。途上国では食料価格高騰が政治的・社会的不安につながるため、政府が輸出制限を行いやすい。


コメの輸出規模は、小麦の約2億トンに対して5000万トンと4分の1だ。しかも生産に占める輸出の割合は小麦23%、大豆45%に対して、コメは7%と極めて低い。わずかな生産の減少でコメの輸出は大きく減少する。3大輸出国の輸出方針や生産の状況次第で、世界の貿易量が左右され、価格が大幅に変化する。コメの貿易は極めて不安定だ。

そこで日本がコメを1000万トン輸出すれば、コメの貿易量は2割上昇して6000万トンになり、日本はインドに次ぐ世界第2位のコメ輸出国になる。

生産量の大半を輸出するので、生産が減少したとしても輸出量への影響は限定的だ。日本は途上国からも信頼される安定的な輸出国となる。日本の輸出により世界のコメ価格が低下すれば、途上国の貧困層を救うことにもつながる。

2018年に減反政策を廃止したというのは、政府が行ったフェイクニュースだったと言える。減反廃止による米価下落は起きず、むしろ減反政策は拡充されていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事、積極的な利下げ支持 他の当局者と

ビジネス

米ISM非製造業指数、9月は50に低下 新規受注が

ビジネス

BofA、米利下げ時期予測を10月に前倒し 年内1

ワールド

トランプ氏、ハマスにガザ和平案合意を要求 米東部時
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中