世界2位のコメ輸出国になれたはずなのに...日本農政の「不都合な真実」

A DRASTIC REFORM

2025年6月18日(水)17時36分
山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

近年、カリフォルニア米と日本米の価格差はほとんどなくなり、日本米のほうが安く売られるときもある。中国では、ジャポニカ米のおいしさを感じさせる日本製の炊飯器が普及したため、ジャポニカ米の消費と生産がここ15年ほどの間に4割に達するまでシェアを伸ばしている。

コメにはジャポニカ米やインディカ米など多様な品種がある。同じ品種でも高級米と低級米では価格差が3~4倍に開きがあり、気候や風土で品質に大きな差が出る。アメリカは200万トンのコメ輸出を行いつつ、タイなどから約100万トンを輸入している。品質の違いから、コメでも産業内貿易が行われているのだ。


中国では、日本米は中国産の10倍以上の価格で取引されている。世界で日本米は最高級の品質として評価され、減反を廃止して価格を低下させれば、世界に敵はない。

最大のコメ輸出国はインド

減反は生産量を抑える政策なので、コメの面積当たり収量(単収)を増加させる品種改良はタブーになった。今や、カリフォルニアのコメ単収は日本の1.6倍にまで向上している。日本の全ての水田面積にカリフォルニア米並みの収量のコメを作付けすれば、長期的には1700万~1900万トンを生産できる。

そのうち1000万トンを輸出していれば、輸入が途絶するなどの有事が起きても、輸出用のコメを国内に回せばしのげる。平時に輸出していたコメは無償の備蓄米の役割を果たす。政府が毎年約500億円をかけている備蓄米管理の財政負担は要らなくなる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ミランFRB理事、大幅利下げを再要求 経済のシフト

ワールド

トランプ氏のガザ調停案、イスラム圏8カ国と相違=パ

ワールド

トランプ氏、ハマスに5日夕までの合意を要求 ガザ和

ビジネス

IMF報告書、国家産業政策はリスク伴うと指摘 米国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中