最新記事
農業問題

「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに

2024年9月6日(金)18時44分
山下 一仁 (キヤノングローバル戦略研究所研究主幹) *PRESIDENT Onlineからの転載
令和の「米騒動」の真相...「不作のほうが売上高が増加する」JA農協発展のための減反政策

kyokyo - shutterstock -

<コメが不足している原因は何か? キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁は「根本原因は減反によるコメの生産量減少」と語る>

コメが不足している原因は何か。

キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「猛暑の影響やインバウンド消費の増加といわれているが、根本原因は減反によるコメの生産量減少だ。高価格を維持するために農水省はコメの供給量を減らし続けており、わずかな需要増でも不足する事態になっている」という――。

【コメ不足の根本原因は「減反政策」】


 

コメの値段が上がっている。棚からコメが消えたスーパーもある。それなのに、農林水産省は「コメの需給は逼迫していない」という。コメ不足について、マスメディアで言われている原因は本質的なものだろうか? また、農林水産省はなぜコメ不足を否定するのだろうか?

コメ不足の原因として二つのことが言われている。一つは、供給が不足、もう一つは需要の増加である。

コメの流通業界は、2023年産米の作況指数は平年作以上だったが、猛暑の影響で品質が低下し一等米の比率が減少したと説明している。一等とか二等とかいうコメの等級は、一定量のコメの中に、粒のそろったコメ(整粒)の比率が高いか低いか、白濁した粒など被害を受けた粒の比率がどのくらいなのか、などで決定される。

イネの穂が出た後に高温が続くと、コメの内部に亀裂が生じてしまう"胴割れ粒"やでんぷんの形成が悪く白く濁ったように見える"乳白粒"などが生じる。

胴割れ粒は精米にする際に割れてしまう。この割合が多いと精米歩留まりが低下し、商品としての評価が下がる。コメの流通業界の主張をわかりやすく説明すると、「見た目の悪い割れたコメや被害のあったコメなどを流通段階で取り除いたので、消費者への供給量が少なくなった」というのだろう。

指摘されないファクトがある。

2023年産米の作況指数101だった。だが、これはコメの生産量が前年より多かったことを意味しない。作況指数というのは一定の面積当たりの収量("単収"という)の良し悪しだからである。コメの作付面積が減少していれば、作況指数100でも、生産量は前年を下回る。

JA農協と農林水産省は、コメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反(生産調整)=作付面積の減少を進めてきた。前年比10万トン減少という前提でコメの作付面積を減らしていれば、作況指数が前年並みの100でも、昨年の9月から今年の8月までに供給される作年(2023年)産のコメの量は前年(2022年)産に比べ10万トン少なくなる。

現に、作況指数101にもかかわらず、2023年産のコメ生産量は前年の670万トンから9万トン減少した。猛暑による影響を云々する前に、2023年産のコメ供給量は減反で減少していたのである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中