大手企業を辞め自身のワインブランドを立ち上げた黒人女性...人種と性別の壁を越え「常識」を壊せ
Art of the Pour
アルコール大手ディアジオが新発売する超高級ラム酒のアンバサダーを務めたのが、この業界に入って最初の仕事だった。その後は、営業とマーケティングを担当。ウイスキーのブレットバーボンや、テキーラのドン・フリオ1942などのブランドを立ち上げた。
その仕事ぶりが認められてLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)に引き抜かれ、ベストはコニャックのヘネシーやウオッカのベルベデールのマーケティングやブランドマネジメントに携わった。次に声をかけてきたのがバカルディだった。
転機になったのは南アへの旅だ。ベストはそこで、ステレンボス産のワインに感銘を受けた。「南アのワインが世界的に高い評価を得ているという印象はなかったけれど、その品質の高さと豊かな伝統に驚いた」と、ベストは言う。
「業界に新風を吹き込むチャンスだと思った。会社勤めをやめて自分のブランドを立ち上げる決断は容易ではなかったが、ほかに選択肢はないと思った。これまでずっと、他人のブランドの立ち上げを手伝ってきたけれど、自分に懸ける時が来たんだ、と」
ワインとアートの類似性
そこでベストは、南アの大手ワイナリー「ステレンボッシュ・ビンヤーズ」と提携。南ア産ワインへのイメージを正し、世界的に認められるワイン造りに乗り出した。
その後、アイベスト・ワインはニューヨーク国際ワインコンペティションで、2つある銘柄の両方が金賞を受賞する快挙を成し遂げた。「私だけでなく、チーム全体、そして南ア産ワインが世界の舞台で認められた瞬間だった」と、ベストは振り返る。