最新記事
神社

宮司の6割超が年収300万円未満...コンビニより多い神社の持続可能性を問う

2025年5月12日(月)09時55分
田川 伊吹 (病厄除守護神 廣田神社 第17代宮司)*PRESIDENT Onlineからの転載
宮司の6割超が年収300万円未満...コンビニより多い神社の持続可能性を問う

Princess_Anmitsu -shutterstock-

<少子高齢化と地域の過疎化に、後継者不足...多くの神社が経営危機に直面するなか、ある神社が「生き残り」をかけて下した大きな決断とは?>

神社の数が減少し続けている。全国最年少の23歳で廣田神社(青森市)の宮司に就任した田川伊吹さんは「経営が立ち行かない神社が多く、宮司の成り手不足が深刻化している。

神社の経営を成り立たせるには、神社や神様のファンを増やしていく必要がある」という──。

※本稿は、田川伊吹『宮司の経営 ビジネスパーソンに伝えたい神職のわたしが得た仕事の知見』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。


計22の神社を「かけもち」する理由

日本にある神社の数は、8万709社(文化庁『宗教年鑑 令和5年版』)にものぼり、全国のコンビニエンスストアの数(約5万5000店)よりも多くなっています。住宅街の片隅やビルの隙間、田んぼの真ん中や山の頂など、日本のいたるところに神社はあります。

ちなみに、神社には大きく分けて2種類あって、ひとつが氏神神社といって地域を守ってくださる氏神様をお祀りする神社です。

昔から地域の人々に信仰され、守られてきました。もうひとつは崇敬(すうけい)神社と言われる神社で、個人の特別な信仰などによって崇敬される神社です。たとえば、明治天皇をお祀りしている明治神宮などがこれに当たります。

約8万社の神社がある一方で、宮司はどのくらいいるのかというと、全国に約1万1000人しかいません。そのため、一人で複数の神社をかけもちしている宮司が多く、なかには50社以上の神社で宮司を務めているという人もいます。

私自身、廣田神社以外に21の宗教法人格のある神社をお預かりしています。

これほど宮司のなり手が不足しているのは、経営が立ち行かない神社が多いからです。

安泰なのは一部の有名な神社だけ

神社の主な収入源は、お賽銭やご祈祷料、お守りやお神札などの授与品による収入(初穂料〔はつほりょう〕)、寄付金などです。しかし、こういった宗教活動による収入だけで経営が成り立っている神は、ほんの一握りです。

想像してみてください。京都などの観光地にある有名神社や初詣に何十万〜何百万人も参拝者が来る神社は別として、各地域にある小さな神社に1日何人の人が参拝に来るでしょうか?

そしてお賽銭は一人いくら納めてくれるでしょうか? また、近所の神社で1年に1回でもお守りやお神札を受ける人は、どのくらいいるでしょうか?

いずれも非常に少ないことが容易に想像できるはずです。地域の神社に寄付をする人となれば、さらに少ないでしょう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:中東ファンドがワーナー買収に異例の相乗り

ワールド

タイ・カンボジア紛争、トランプ氏が停戦復活へ電話す

ワールド

中国の輸出競争力、ユーロ高/元安で強化 EU商工会

ワールド

新STARTの失効間近、ロシア「米の回答待ち」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的、と元イタリア…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中