昨今の経済情勢、政策調整「急いでいい状態ではない」=増日銀委員

7月1日、日銀の増一行・新審議委員(写真)は就任会見で、米国の関税政策に伴う不確実性が高い状況下、次の利上げ判断は慎重にすべきだとの考えを示した。同日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takahiko Wada
[東京 1日 ロイター] - 日銀の増一行・新審議委員は1日の就任会見で、米国の関税政策に伴う不確実性が高い状況下、次の利上げ判断は慎重にすべきだとの考えを示した。実質金利はマイナス圏で推移しているが「昨今の経済情勢を見ると(政策調整を)急いでいい状態とは言えなくなっている」と指摘。米関税の影響に伴う経済・物価の下振れリスクと国内要因による物価上振れリスクに直面する中にあっても、「(上下)どちらに行くのか、慎重に見極めていく」と述べた。
米国の関税政策を巡っては「自動車は対米輸出の中核」とし、関税がどうなるか「予断を許さない状態が続いている」と述べた。
基調的な物価上昇率が2%に届いていないとの日銀の説明については「違和感はない」と述べ、積極化してきた企業の賃金・価格設定行動が定着していくのか「端境期にいる」とした。食品などでは価格転嫁が進んでいるが、そうした流れが日本全国に伝わっているとまでは言えないとの認識を示した。
増氏は6月30日に退任した中村豊明氏の後任で1日付で就任した。三菱商事で最高財務責任者(CFO)を務めるなど、中村氏と同じ産業界の出身。
足元のドル/円は143円付近と引き続き円安水準にあるが、円安は良い面と悪い面が「いつでも両面ある」と述べた。「かなりの会社が(円安によって)業績が上振れしているのは間違いない」とする一方で、悪い影響は消費者側に物価高という形で出ると述べた。
日銀が保有する上場投資信託(ETF)については「今の状態がいいとは誰も思っていない」と指摘。ただ、取り扱いは「極めて慎重にやっていただくことが企業としては望ましい」と述べた。日銀のETF大量保有について、専門家からは企業統治の観点で問題だとする指摘が出ている。増氏は、企業は「日銀に株を持たれている意識はあまり持っていない」と述べた。