最新記事
対米投資

対米投資に「懸念の声」日本企業から相次ぐ...日本製鉄のUSスチール買収阻止で

2025年1月7日(火)20時57分
日鉄の橋本英二会長兼最高経営責任者

1月7日、 経団連の十倉雅和会長(住友化学)など日本企業の首脳は日本製鉄のUSスチール買収にバイデン米大統領が中止命令を出したことを受け、対米投資に影響が出る可能性に相次ぎ懸念を示した。写真は同日、都内で記者会見する日鉄の橋本英二会長兼最高経営責任者(2025年 ロイター/Irene Wang)

経団連の十倉雅和会長(住友化学)など日本企業の首脳は7日、日本製鉄のUSスチール買収にバイデン米大統領が中止命令を出したことを受け、対米投資に影響が出る可能性に相次ぎ懸念を示した。

十倉会長は経済3団体のトップが揃ったこの日の年頭記者会見で、「米国にどんどん投資をしてきたが、経済安全保障を理由にこういう決定をなされ、日米経済関係に何か影響を及ぼさないか懸念している」と語った。日本商工会議所の小林健会頭(三菱商事相談役)も「影響は非常に大きい」とし、「公正なる法の下に自由な経済活動を行うことのライクマインデッドカントリー(同志国)の中核が日米だった」と述べた。


 

米商務省の統計をもとに日本貿易振興機構(JETRO)がまとめたデータによると、対米直接投資の残高は日本が2023年まで5年連続首位。カナダ、英国、フランスが続いている。十倉会長は「雇用創出も製造業だけで見れば日本が最も貢献している」と強調した。

新年祝賀会の会場で記者団の取材に応じたキリンホールディングスの磯崎功典会長は「一番米国にとって信頼できる国の一つが日本だと思っている。その国でさえも、リスクとして考えなければならない」、ANAホールディングスの芝田浩二社長は「一番心配されるのは日本企業の対米投資」と述べた。

日鉄は6日、USスチールの買収中止命令の無効を求めて訴訟を提起したと発表した。

7日の経済3団体の会見に同席した経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)は、「米国の産業活性化のためにいい話。それが理解できない今の米国のありようにクエスチョンマーク(疑問符)が付く」と述べた。

一方、三井不動産の植田俊社長は「当社は米国で40年以上、ビジネスをやってきている。米国の現地法人も米国人がCEOで、ローカルパートナーと常に組んでビジネスをやっており、完全に米国企業になっている」とした上で、「あまりろうばいすることなく、細心の注意を払いながらやっていく」と語った。

(浦中美穂、清水律子、白木真紀、久保信博 編集:宮崎亜巳)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU、米関税期限前の合意ほぼ不可能に 現状維持を目

ワールド

ハマス、米停戦案に「前向き」回答 直ちに協議の用意

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産加速で合意の公算 5

ワールド

IAEA、イランから全査察官撤退 核施設のアクセス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中