最新記事
SDGs

世界最大級の「CO2排出源」、中国の鉄鋼業界が挑むグリーン水素による「脱炭素」革命

CHINA'S GREEN STEEL

2023年4月27日(木)19時01分
チン・シュエ
中国宝武鋼鉄の工場

「CO2排出源」が業界を挙げて対策に乗り出した(宝武鋼鉄の工場) QILAI SHENーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<グリーン水素で排出ゼロへ。世界全体の温暖化対策のカギを握る「大気汚染大国」で新たな試みが進行中>

中国は2月6日付の「2022年中国気候公報」で昨年の平均気温が観測史上2番目に高く、春、夏、秋の気温は過去最高だったと発表した。

世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国である中国がカーボン・フットプリント(CO2排出量)を削減しない限り、地球温暖化は緩和できない。なかでも脱炭素化のカギを握るのは製鉄部門。製鉄部門の年間排出量は中国全体の17%と電力部門に次いで2番目に多い。鉄鋼世界最大手の中国宝武鋼鉄集団の20年のCO2排出量はパキスタン全体の排出量を上回った。

中国の鉄鋼業界が排出量を削減するための選択肢は主に3つ。1つは従来の石炭ベースの溶鉱炉から、再生可能エネルギー由来の電力と高品質の鉄くずを利用するアーク炉(EAF)に切り替える方法。環境に優しいが普及するほど鉄くずの需要が増し、生産コストが上昇するのが難点だ。

2つ目は既存の製鉄所に炭素回収装置を設置する方法だ。ただし製鉄所の炭素回収プロジェクトはまだ実証段階で、コストを下げて大規模な解決策にするには引き続き投資が必要だろう。

3つ目は製造過程でCO2などを排出しない「グリーン水素」技術の採用だ。まだ初期段階で、生産は再生可能エネルギー由来の電力の供給に左右される。生産拡大にはそうした電力価格を引き続き下げていく必要があるが、産業化できれば製鉄業界のCO2排出削減に重要な役割を果たし得る。

政府の後押しが不可欠

現に世界トップクラスの中国鉄鋼メーカーの半数が既に生産の脱炭素化を目指して水素技術に投資している。宝武鋼鉄は昨年2月15日、広東省湛江でグリーン水素を燃料とするアーク炉の建設を開始。今年末の完成予定で、同社初のゼロカーボン・アーク炉となる。

同社は21年11月、低炭素技術の産業化を目指して技術協力を進める企業アライアンスの発足と、水素を含む低炭素技術の基礎研究に年間最大3500万元(約500万ドル)を投じる基金の設立を発表。アライアンスにはアルセロール・ミタル、首鋼集団、BHPグループ、リオ・ティントなど15カ国から鉄鋼・鉱業大手60社以上が参加する。

鞍山鋼鉄集団も昨年、グリーン水素ベースの画期的な製鉄技術を発表。河北鋼鉄集団は、再生可能エネルギーモデル地区に指定されている河北省張家口で世界初の水素エネルギーによる製鉄技術の実証実験に向けた整備を開始した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン南部ブシェール原発付近に飛翔体着弾、被害なし

ビジネス

米国株式市場=続伸、旅行関連銘柄が高い FOMCに

ワールド

イラン、政権幹部ラリジャニ氏の死亡確認=メディア

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、主要中銀の金融政策決定控え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 8
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中