最新記事
ビジネス

「オススメは全部」と言い出すラーメン屋は流行らない...佐藤オオキのブランディングの法則

2022年12月17日(土)11時48分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


まずは全社員が、あわよくばパートやアルバイトに至るまでが、自分たち「らしさ」を把握していなくてはいけません。なぜなら、従業員の立ち居振る舞いや身だしなみもお客さんとの大切な接点だからです。

商品や広告物のように目に付きがちなものだけでなく、備品や梱包資材などのすぐに捨てられてしまうようなものも対象となります。販売店などの場合、お客さんから見える売場だけでなく、休憩室やバックヤードにも「らしさ」が反映されなければいけません。

「らしさ」が出せないのであれば、それは決してお客さんから見られてはいけません。それがお客さんからの「信頼」を裏切ることにつながるからです。テーマパークのキャラクターの中の人が、休憩中にタバコを吸っているところを見られてはいけないのと一緒です。というか、「中の人」っていい方もそもそもNGなんですよね、きっと。

こうした一見すると売上に直結しないように思えることに対して、継続的に労力やお金を投資するのがブランディングなのです。この、「らしさ」の徹底を行う際に甘い誘惑となるのが「売れそうな商品」です。

企画や商品開発の段階で「売れそう」という感触は、市場の動向や、販売店の反応、お客さんのニーズを把握しているからこそ得られるわけで、それ自体は必ずしも悪いことではないのですが、どうしても目線が自分自身ではなく、外に向いてしまいがちです。目線の照準もグッと手前に近づきます。

「らしさ」のフィルターがおざなりになるのは、こういう時です。そして、このような他人本位かつ近視眼的なモノづくりを繰り返していくうちに、長期的なブランド資産が形成しにくくなるのです。

「確実に売れると思うが、商品化はできない」

短期的には売れなくても、長期的なブランド価値を高めてくれる商品を意識的に手がけることも必要なのです。10年以上前に海外のラグジュアリーブランドと仕事をした時、ブランドマネージャーにデザイン案を提案したら「このデザインは確実に売れると思うけれど、うちのブランドとしては商品化できない」といわれたことがあります。

もはや自分の案が採用されたかどうかなんてどうでもよくなるくらい、垣間見えた「ブランドの本質」に感心した記憶があります。

ブランドとはなんぞや、はこれくらいにして、自分がブランディングのプロジェクトを進める際に気にしていることが3つあり、これを「ラーメン屋さんの法則」と勝手に呼んでいます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-中国製造業PMI、10月は50.6に低下 予

ワールド

イスラエル、レバノンにヒズボラ武装解除要請 失敗な

ワールド

AIを国際公共財に、習氏が国際機関構想アピール A

ワールド

トランプ氏、エヌビディアの最先端半導体「中国など他
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中