最新記事

ビジネス

「天才に学ぶ」類のアイデア本が、凡人には役立たない理由

2022年10月5日(水)17時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
天才子供

RichVintage-iStock

<巷には「天才はどう考えたか」といったアイデア本が溢れているが、天才ではない私たちが、アイデアを生み出せるようになるために本当に役立つヒントとは?>

エッセイ『女ふたり、暮らしています。』で、「恋人でもない女友達と家族をつくる」という自由でユニークな発想が日本でも共感を集めた韓国の作家、キム・ハナ。韓国の大手広告代理店で長年コピーライターを勤めた経験のある彼女が、その発想力やアイデアの原点について記した本『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』が先日、日本でも翻訳出版された。

しかし、単純な法則やハウツーを知ったところでアイデアは生まれない。自己啓発書のように確信を持って一方的に「ああしなさい」「こうしなさい」という文章には抵抗があったという彼女は、本書を真夜中のバーで語り合う男女の対話形式で記した。1杯の酒を飲む間に発想力を養うために知っておきたい「アイデアの本質」がまた1つ見えてくる。

ここでは、決して天才ではないわれわれが、創造性を発揮してアイデアを生むためのヒントとなる部分を『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』から全3回にわたって抜粋して紹介する。今回は、その第1回。

◇ ◇ ◇


人間なんかが作り出した最高傑作、自転車に乗れますか?

この本は創造性とアイデアに関するものです。

私は、創造性にはどこか、自転車に乗るのと似ているところがあると思います。創造性も自転車の乗り方も、決して言葉や文章では学ぶことはできません。「倒れそうになっている方向にハンドルを切れ!」みたいな言葉は、自転車に乗れる人が自分の経験を振り返りながら、「こんな感じだったかな」ぐらいの気持ちで言っているのであって、その法則を知ったからといってすぐに自転車に乗れるものではありません。

私たちが初めて自転車に乗った時のことを思い出してみましょう。

思ったようにうまくいかないと感じただろうし、何度か転んだりもしたでしょう。でも、両足でペダルを踏んでついに二、三十センチ進んだ瞬間、自分の力で前に進み、自分の足で操りながらいくらでも走ることができるんだということに気づいたはずです。その魔法みたいな瞬間を経て、あなたは一生「自転車に乗れる人」として生きていくわけですが、その悟りは、実際に自転車に乗ってみなければ得られません。私たちは皆、自分だけのやり方で自転車に乗っていると言えます。そして、特別な理由がない限り、誰でも自転車に乗ることができるのです。

創造性も同じです。

私たちは皆、創造性を発揮し、啓発することができます。しかし、それは単に「逆から考えよ」、「すべてのことに好奇心を持て」みたいな法則に従ったからといって決して学べるものではありません。自分の力で前に出て、自分の考えで操作しながら進んでいかなければならないのです。

ふらつくことも転ぶこともあるでしょうが、私たちは皆、自分だけのやり方でアイデアの自転車に乗って創造性の世界へと進んでいけると信じています。私が実際に経験した、あの魔法みたいな悟りの瞬間をこの本を通じてみなさんと分かち合えることを願います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中