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バイデン政権が打診したLNGの欧州融通、日本側「実現可能か慎重に検討」

2022年2月4日(金)19時00分
横浜港を通過するLNGタンカー

米国が日本に対し、調達した液化天然ガス(LNG)の一部を欧州に融通できないか打診した問題について、実現可能かどうか日本政府が検討に入ったことが分かった。写真は2015年9月、横浜港を通過するLNGタンカー(2022年 ロイター/Yuya Shino)

米国が日本に対し、調達した液化天然ガス(LNG)の一部を欧州に融通できないか打診した問題について、実現可能かどうか日本政府が検討に入ったことが分かった。複数の政府関係者が明らかにした。この先気温が一段と下がり、国内で需要が高まることが予想されることから、慎重に見極める。

関係者の1人によると、日本側は今週に入って打診を受けた。ウクライナ情勢を巡って米国がロシア制裁に踏み切れば、ロシアは欧州へのガス供給を止める恐れがある。

萩生田光一経済産業相は4日の閣議後会見で、「外交上のやり取りについてはコメントを控える」とした上で、「一般論として、今後、国際社会にどのような貢献ができるか、検討してきたい」と述べた。

一方で萩生田氏は「今年の冬は寒い予測が立っている。電気を含め、エネルギーはしっかりと確保していかなければならない」と指摘。「国民生活に影響を与えない範囲を確保した上で、何かできることがあれば、というイメージでいる」と語った。

日本の電力はLNGと石炭火力に大きく依存しており、昨年冬はLNGの在庫が減少して電力が不足しそうになった。財務省の貿易統計によると、2021年のLNG輸入量は前年比0.2%減の7432万トン。資源エネルギー庁は今年の冬について、「燃料制約を生じさせないよう、(発電事業者は)追加調達などの最大限の努力が求められる」との指針を出している。

東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAのトレーディング子会社、JERA Global Marketsの葛西和範最高経営責任者(CEO)は4日の会見で、「物理的にできないことはない」としながらも、「冬はどこの会社も比較的余裕がない。一般論としては簡単ではないだろう」と語った。

前出とは別の政府関係者は「これからLNGの需要期に入る。日本国内にどれだけLNGの在庫があるのか、これから寒い2月のなかで需要がどこまで増えるか、精査しないと融通できるか分からない」としている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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