最新記事

経営

不安に応える 副業のメリットとデメリット

2022年1月26日(水)21時05分
中橋章好 ※経営ノウハウの泉より転載

副業・兼業ガイドラインのポイント整理(2020年9月改定)

企業が副業を許可するにあたって気になることに、社員の労働時間の管理があります。

2020年9月に改正された『副業・兼業ガイドライン』(正式名称:『副業・兼業の促進に関するガイドライン』)では、企業や個人が安心して副業・兼業に取り組めるように、労働時間管理や健康管理等について示しています。

ここでは、同ガイドラインでの企業の労働時間管理のポイントをご紹介しましょう。

■労働時間や割増賃金の考え方

法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)や時間外労働の上限(上限単月100時間、複数月平均80時間)は、労働時間を通算して適用されます。

時間外労働の割増賃金は、本業と副業を通算し、時間外労働の上限の範囲内で割増賃金を支払うとしています。

■労働時間が通算されないケース

労働基準法が適用されない事業主、委任、請負、フリーランスなどは、労働時間を通算されません。また、労働基準法が適用されても、労働時間規制が適用されない場合*は、労働時間は通算されません。なお、申告等による就労時間を把握することで、長時間労働にならないように配慮することが望ましいとしています。

*農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密文書取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度の者

■副業の労働時間管理の方法

使用者は、労働者からの申告により、副業・兼業の有無・内容を確認します。その方法として、就業規則等に副業・兼業に関する届出制を定める必要があるとしています。

最後に:中小企業こそ副業を検討すべき

2021年9月、オンラインで開催された経済同友会において、サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏が「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要です」と発言して、話題になりました。発言の翌日に同氏は「45歳は節目であり、自分の人生を考え直すことは重要。早い時期にスタートアップ企業に移るなどのオプション(選択肢)をつくるべきだ」と説明しています。

"新卒一括採用、終身雇用、企業内組合"という日本に根差された人事制度や風土があり、これに反した発言をすると反発にあうことも。しかし、この人事制度や風土は同社のような大企業でも崩れつつあるのです。人材不足に悩む中小企業の経営者は、多様な働き方のオプションを真剣に考えなければなりません。

人には、会社人の側面だけではなく、家族人、地域人、趣味人、友人などの側面があり、さまざまな活動をしています。これと同じように、本業の会社人以外の副業を認めることで、創造力を向上させることができるのではないでしょうか?

複線型人事制度(管理職、専門職、勤務地限定制度、契約社員制度、社内ベンチャー制度、役職定年制度)だけでは、社員のニーズの対応できない時代になったのかもしれません。中小企業こそ副業を含めた多様な働き方に舵を切りたいものです。

【参考】
『2020年労働時間等実態調査の集計結果』/日本経済団体連合会
『多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)』/独立行政法人労働政策研究・研修機構

2021.12.28

[執筆者]
中橋章好
オフィス中橋  有限会社 総務の知恵 社会保険労務士
大阪府社会保険労務士会所属。日本ファイナンシャルプランナーズ協会所属。建設コンサルタント会社総務部勤務を経て、平成12年合同事務所にて創業。平成14年現在の事務所へ移転。平成16年法人設立。

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

自工会会長、米関税「影響は依然大きい」 政府に議論

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金

ワールド

EUのエネルギー輸入廃止加速計画の影響ない=ロシア

ワールド

米、IMFナンバー2に財務省のカッツ首席補佐官を推
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中