最新記事

仮想通貨

仮想通貨が利子収入を生む「レンディング」、年利6%でも得と言い切れない訳

2021年9月8日(水)11時27分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

米国のローン延滞率

210908kr_ce04.png

(出典:Kraken Intelligence)

クラーケンでは、デフォルト・リスクを見る際に米国のローン延滞率を参考にしています。連邦準備銀行経済データ(FRED)によりますと、米国の2020年の消費者ローンの延滞率は1.88%〜2.52%でした。

カストディアン・リスク

次は、カストディアン・リスクです。投資家がCeFiに資金を預ける時、その資金はCeFiかCeFiが委任する第3者機関によって管理(カストディ)されます。もし悪意を持った者がハッキングをしてカストディアンから資金を盗んでしまえば、その資金は元に戻ってこなくなる可能性があります。一般的にCeFiは、そうした事態に備えて保険に入っていますが、補償にも限度があります。

2020年、仮想通関連のハッキングや窃盗の被害額は合計で約5億1600万ドルでした。そのうち約60.5%にあたる約3億1200万ドルが仮想通貨取引所で発生したものでした。一方、2020年の仮想通貨レンディング市場規模は380億ドルです。

これらの数字をもとに、以下のように計算をします。
5億1600万ドル/380億ドル×60.5%=0.81%

0.81%がCeFiのカストディアンリスクと考えられます。

信用・透明性リスク

最後は、信用・透明性リスクです。CeFiはDeFiより安定性があり顧客サポートが充実していますが、中央集権的な意思決定であるが故に透明性の欠如が問題になることがしばしばあります。例えば、顧客が担保として預けた資金がCeFi側が規定する目的以外に使われる可能性があります。資金を預ける投資家は、自己資金がリスクの高い投資活動に使われているとは夢にも思いません。

実際、詐欺によって資金を失った仮想通貨レンディングプラットフォームが破産申請をしたことが2020年にありました。このプラットフォームは、「完全担保型モデルによる保証」を謳っていたものの、1億4000万ドル相当の顧客の資金を危険に晒していたことが判明しました。結局、資金の貸出し先を厳しく審査せず詐欺的な資産管理業者に委託していたことが資金の損失につながりました。

CipherTraceによりますと、2020年の仮想通貨関連犯罪による被害額合計は19億ドルで、そのうち73%が詐欺でした。

ただ、2020年後半までに詐欺犯罪のほぼ99%がDeFi関連になりました。このため、クラーケンはCeFiに関する詐欺犯罪が全体の1%であると仮定します。

上記を勘案して信用・透明性リスクを計算すると、以下のようになります。
13.87億ドル/380億ドル×1%=0.36%

仮想通貨犯罪の被害額

210908kr_ce05.png

(出典:Kraken Intelligence)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米長官、イランのウラン濃縮計画「完全解体を」 IA

ビジネス

米労働統計局、CPI統計向けに非常勤エコノミストを

ワールド

ウクライナ軍総司令官、領土喪失で2高官を解任=メデ

ワールド

FRB理事にミラン氏、米上院が僅差で承認
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中