最新記事

仮想通貨

高利回りで人気の分散型金融「DeFi」、本当にリスクに見合う運用法なのか

2021年9月3日(金)20時13分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
DeFi(イメージ)

putilich-iStock

<ブロックチェーンを使った「分散型金融」に仮想通貨を預けることで高い利息を得ることができるDeFiだが、実際にはどれほどのリスクがあるのか>

仮想通貨業界のニュースを追っている方は、DeFiという言葉を聞いたことがあるかもしれません。直訳すると「分散型金融」。ブロックチェーンを使って世界中に分散するユーザーが相互にチェックし合うことによって、預金や融資などの金融サービス提供を、銀行などの仲介業者を頼らずに個人間で(P2P)で実現するという壮大な実験です。

最初にDeFiブームが起きたのは、2020年夏頃です。その後、ビットコインをはじめとする仮想通貨市場全体の急上昇もあり、主要なDeFiプラットフォームが預かる資産額は2021年8月26日時点で840億ドル(約9兆2000億円)と1年前より11倍以上も増えました。

日本の取引所は現時点ではDeFi系の仮想通貨を取り扱っていませんが、世界の投資家の間では高い人気を誇っています。

DeFiプラットフォームが預かる資産額(TVL)

210921kr_de02.png

(出典:DeFi Pulse)

DeFi人気を支える最大の理由は、DeFiプラットフォームに資金を預けることで獲得できる利息が高いことでしょう。とりわけ、先進国を中心に低金利が続く中、銀行預金で得られる利息よりもはるかに高い利息は投資家にとって魅力的です。

しかし、高いリターンの背景には高いリスクも存在します。例えば、2021年8月10日、DeFiを手がけるポリ・ネットワークが、ハッカー攻撃により約6億ドル(約660億円)相当の仮想通貨が流出したと発表。被害額は2018年のコインチェック事件を上回る額でした。

その後、ハッカーが資金の返却を申し出ましたが、ポリの投資家は生きた心地がしなかったのではないでしょうか。

本稿では、上記のような「プラットフォーム・リスク」や仮想通貨自体に内在する「通貨リスク(Currency Risk)」について分析し、DeFiプロジェクトが謳う利息が本当にリスクに見合うものなのかを検証します。また本稿では、DeFiの中でも、とりわけ預けた仮想通貨に対して利息を得る「レンディング」を想定して、リスクを算定します。

通貨リスク

そもそも金利とはなんでしょうか?金利は、資金を借りるコストのことであり、一般的に年間の利回りで表現されます。基本となる利子率はリスク・フリー・レートと呼ばれており、将来の支払いが保証されている=リスクがゼロとみなされる資産の利回りを指します。

一方、リスク・フリー・レートに対する追加的な期待利回りはリスク・プレミアムと呼ばれています。伝統的な金融市場では、一般的に国債の利回りがリスク・フリー・レートのベンチマークとして使われ、例えば株式の配当利回りと国債の利回りの差が、その株式のリスク・プレミアムと考えられています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中