最新記事

仮想通貨

仮想通貨が利子収入を生む「レンディング」、年利6%でも得と言い切れない訳

2021年9月8日(水)11時27分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
利子(イメージ)

fatido-iStock

<仮想通貨を預けて利子収入を得るレンディングへの注目が高まっているが、その適正なリスクの計算と、DeFiとの違いを探る>

仮想通貨を預けることで定期的に利子を受け取れるレンディングサービスが、新たな投資マネーを引きつけています。これまで仮想通貨業界では、トレードやレバレッジ取引、取引所間の価格差を狙った裁定取引などが主流でした。仮想通貨レンディングは、2018年中頃から人気が出始めた新たな投資手段です。

仮想通貨投資には長期保有を意味する「ガチホ」というスタイルも存在します。レンディングとガチホは、受け身の投資スタイルという点で似ていますが、利子を受け取れるかどうかが異なります。例えば、ビットコイン(BTC)をガチホした場合、購入時の価格と売却時の価格の差がリターンになりますが、レンディングは価格差によるリターン以外に定期的な利子収入が加わります。

今回、仮想通貨レンディングの代表例として解説するのは、BlockFiやNexoなどが有名なプラットフォームである「CeFi(中央集権型金融)」です。最近は似たような名前であるDeFi(分散型金融)の注目度が上昇していますが、CeFiはDeFiと異なり、預かり資金をインターネット上に散らばったユーザーが管理するのではなく、中央集権的な組織が管理することに特徴があります。

主要CeFiと年利

210908kr_ce02.png

(出典:Kraken Intelligence)

CeFiが預金者に提供する利子率は、一般的に、日本やその他の先進諸国の銀行預金の利子率より高くなっています。低金利の時代において、仮想通貨レンディングの利子率は投資家にとっては魅力的に映るのでしょう。

ただ、年利5%や6%という額面だけで判断することは危険かもしれません。本稿では、CeFiの利子率が本当にリスクに見合ったリターンなのかどうかを考える上で、代表的な仮想通貨イーサリアム(ETH)を例にとって、必要なリスク要因が何かを解説します。

CeFiのビジネスモデル

CeFiは、預金者にとって、事前に決められた頻度での金利支払いに合意して資産を預けるという点では、銀行預金と同じです。銀行預金も、当然、中央集権的な企業・組織を通した活動であることから、大別するとCeFiの一種と考えられるでしょう。ただここでいうCeFiとは仮想通貨に関するレンディング業者に限られています。

中央集権的な企業・組織を通した活動とはどういうことでしょうか?一つの企業・組織が、金融サービスを提供するためのプラットフォームを所有し、顧客データや顧客資産の管理に責任を持つということです。また、規制当局の求めに応じてKYC(Know Your Customer)と呼ばれる顧客確認を行います。言い換えますと、顧客は自分の資産に関するリスク管理を第三者のサービス提供者に任せていることになります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中