最新記事

環境

トナカイとオーロラの地スウェーデン北部へ再生エネルギー狙い企業流入

2021年6月7日(月)09時13分
スウェーデン北部ルーレオ

トナカイと雄大なオーロラの眺めで国際的に知られているスウェーデン北部は、再生可能エネルギーである水力と風力を豊富に抱えた地域でもある。写真はスウェーデン北部ルーレオで2012年11月撮影(2021年 ロイター/Alister Doyle)

トナカイと雄大なオーロラの眺めで国際的に知られているスウェーデン北部は、再生可能エネルギーである水力と風力を豊富に抱えた地域でもある。今、ここに温室効果ガスの排出抑制を迫られているエネルギー集約型企業が続々と集まり、大量の雇用を生み出している。

アンデション財務相によると、製鉄過程で二酸化炭素を出さない「ゼロカーボン・スチール」や電気自動車(EV)用電池などの分野への投資は、今後10年間で1兆スウェーデンクローナ(1200億ドル)を超える見通し。

同財務相は5月の説明会で「スウェーデンでは、グリーントランスフォーメーション(GX、再生可能エネルギーへの転換)による雇用の創出は未来のことではなく、すでに起きている」と述べた。

欧州連合(EU)は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする計画の中で、EVを目標達成の柱の1つに据えている。運輸セクターは域内で発生する温室効果ガスの4分の1を占めており、温室効果ガスを出さない車の数を2030年までに少なくとも3000万台とすることが目標だ。

EUの環境基準の達成を法律で義務付けられた企業は、再生可能エネルギーを確保する必要がある。独フォルクスワーゲン(VW)が出資する電池メーカー、ノースボルトは迷うことなく投資先にスウェーデン北部を選んだ。

ノースボルトは手始めに、スウェーデンの首都ストックホルムの北方約800キロのシエレフテオに約40億ユーロ(48.8億ドル)を投じて大規模なバッテリー製造工場を建設する。2024年の生産能力は40ギガワット時となる予定で、これはEV70万―80万台の需要を賄うのに十分な量だ。

ピーター・カールソン最高経営責任者(CEO)は「シエレフテオの水力発電インフラへのアクセスが、非常に重要だった」と述べた。当地の電力コストはドイツの約3分の1、中国の約5分の1だという。

人口が少ないシエレフテオにとってノースボルトの雇用は大きなチャンスで、住民の新たな流入も起きている。工場建設のために昨年シエレフテオに引っ越してきたノースボルトの幹部は「もちろん、もう少し暖かいと良かったが」と話した。

安価でクリーン

スウェーデンは1950年代から70年代にかけて水力発電に大規模な投資を行い、コスト低下と国際競争力の向上を目指した。水力発電の多くが北部に集中している。

この10年間は風力発電に注力し、今では国内電力の20%程度を占めるまでになった。

ノースボルトのカールソンCEOは、米EV大手テスラの元幹部。同社製バッテリーの製造過程で排出される温室効果ガスは、推計で性能がほぼ同じ中国製の4分の1程度になる見通しだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

クックFRB理事の弁護団、住宅ローン詐欺疑惑に反論

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、5万円割れ 米株安の流れ

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を

ビジネス

米ボーイング、エミレーツから380億ドルの受注 ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中