最新記事

日本経済

「東京五輪は中止の方が日本経済に吉」 株式市場、開催のリスクを重視

2021年5月26日(水)18時28分

五輪開催といえば、金融市場では「景気浮揚効果から株価にはプラス」というのが定石だった。都内で18日撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

五輪開催といえば、金融市場では「景気浮揚効果から株価にはプラス」というのが定石だった。しかしコロナの感染が収まらない中、既に1年延期された東京五輪は、追加的な経済効果が乏しいだけでなく、政局への影響や感染拡大懸念から株式市場の重しとなりやすく、開催を延期・中止した方が日本株にプラスに働くとの見方が、ここにきてマーケットで急浮上している。

政治リスクに敏感な海外投資家

市場関係者が懸念するのが、反対の声が強い国内世論を押し切って開催した場合の政権への影響だ。各社世論調査でも既に菅政権の支持率が低下している中、開催を強行すれば総選挙を前に政治が不安定化するリスクが高まる、との見る向きが多い。

こうした政治リスクにとりわけ敏感なのが海外投資家だ。日本取引所グループの統計によると、海外投資家は5月第2週に現物・先物合計で1兆円以上の日本株を売却し、昨年3月初め以来の大幅売り越しを記録した。

クレディ・スイス証券副会長で経済調査本部長の白川浩道氏は、海外のリアルマネー投資家から日本の政治リスクに関する問い合わせが増えていると語る。「日本株は2月半ばから3カ月もアンダーパフォ―ムしており、欧米だけでなく、新興国のソブリン系投資家など、日本株に首をかしげる投資家が増えている。まだ本格的に売り始めているわけではないが、日本市場個別のリスクとして、コロナ対策に失敗して政治が大きく変動するリスクがどの程度あるのか評価している段階だ」という。

五輪なければ日経3万2000円

また、ワクチン接種率が他の先進国に比べ大幅に低い中で五輪が実施された場合、開催に伴って感染が再び拡大する懸念がつきまとう。西村証券の門司総一郎チーフストラテジストは、「五輪が再延期もしくは中止となれば、あく抜けして日本株は買われるのではないか。それが決まれば政府としても感染対策に注力できる。五輪がなくなれば、日経平均は3万2000円くらいまで上昇するのではないか」と予想する。

東京五輪開催に伴う政治的・社会的リスクをそれほど重視しない投資家も存在するが、それでも、五輪が市場にもたらす追加的メリットがほとんどない、というのは市場関係者の一致した見方となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、26日にマレーシア訪問 タイ・カンボジ

ビジネス

金価格、最高値更新続く 米利下げ観測などで銀も追随

ビジネス

ソフトバンク株がプラス転換、PayPayが12月に

ワールド

インドとカナダ、関係改善へ新ロードマップで合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中