最新記事

ビジネス

元マイクロソフト役員が作った会社は「エクセル作業、原則禁止」 週休3日で年収3倍にした秘訣とは

2021年4月1日(木)19時20分
越川慎司(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスターCaster Anywhere事業責任者) *PRESIDENT Onlineからの転載

600件近い謝罪訪問を経験してつかんだもの

私は前職のマイクロソフトで、最高品質責任者として600件近い謝罪訪問をしました。それだけマイクロソフトが起因する問題で、法人顧客を中心にご迷惑をおかけしてしまったのです。上司である社長の手厚いサポートもあり、私は逃げずに1件1件丁寧に対応をしていきました。

1回の謝罪訪問で終わることなく、二度三度訪問して再発防止策を講じたことを認めていただいたおかげで、約3割の顧客から追加契約をいただくことになりました。信頼を得ようとしてトラブル対応をしたわけではありませんが、顧客と一緒になって奮闘したことで結果的に評価をしてもらえたのだと思います。

この謝罪訪問で構築できた信頼関係は、マイクロソフトを卒業してクロスリバーを起業したときにも続いており、設立1年目に業務委託の契約をしたのは、かつて謝罪訪問した先の担当者からの依頼によるものでした。

トラブル発生のような緊急事態のときにこそ、人間の本質が見えます。そこで一緒に修羅場を経験し、対話しながら一緒に問題を解決したことが、深い信頼関係構築につながっていくことは間違いありません。

現在は代表を務めるクロスリバーと事業責任者を務める株式会社キャスターで700社を超える企業のリモートワークを成功に導いていますが、リモートワークにおける信頼構築も同じことが言えると思います。目の前に同僚や部下がいない中で、確固たる信頼関係を構築・維持していくには、対話と交流によって一緒に達成感を味わうことが必要不可欠です。

成果につながるのはたった15%の作業

話が少しそれましたが、この調査分析によってわかったことは、継続契約に大きなインパクトを与えるのは全体の稼働時間の15%の作業であったということです。

決して残りの85%をしなくていいということではないのですが、この15%を見つけ出し、そこにエネルギーを注ぎ込むことで追加契約や大型契約を手繰り寄せることができるということです。

先ほど説明したトラブル対応はその好例です。また資料作成で言うと、定例会議の資料よりも経営会議の発表資料のほうが、当然ながらビジネスにより大きな影響を与えます。

新型コロナの影響で訪問型の営業が敬遠される中では、オンライン営業のほうが後の契約により大きなインパクトを与えることもわかりました。

books20210401.jpgこうした「15%の作業」が何かを明確にして、そこに注力することが効率アップの鍵となります。

時間や体力を大幅に伸ばすことができないのであれば、限られたエネルギーをその15%に注ぎ込めばよいのです。

逆に言うと、成果に直接つながらない報告書やメール処理に100%のエネルギーを注ぎ込まなくてよい、ということです。

このように、目的に向かってアクセルとブレーキを踏み分けることで、限られた時間でより大きな成果を残すことができるようになります。

越川慎司(こしかわ・しんじ)

株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスターCaster Anywhere事業責任者
元マイクロソフト業務執行役員。国内および外資系通信会社に勤務し、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、600社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。若手向けのオンライン講座は約1万人が受講し、満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『巻込力』(経済法令研究会)など13冊がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg





今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

トランプ減税・歳出法案、下院最終採決へ前進 手続き

ワールド

米EU関税問題、早期解決を メルツ独首相が訴え

ワールド

仏航空管制官がスト、旅行シーズンに数百便が欠航
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中