展望2021:デジタル化市場は拡大 コロナで「DX格差」広がるおそれも
IT専門調査会社、IDC Japanはデジタル技術を活用して組織やビジネスモデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)市場について、今後も15%程度の成長が継続すると予想する。都内で6月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
IT専門調査会社、IDC Japanはデジタル技術を活用して組織やビジネスモデルを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)市場について、今後も15%程度の成長が継続すると予想する。ただ、足元では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、業種や企業ごとで投資余力に違いが見られ「DX格差」が広がるおそれもあるという。
DXは日立製作所や富士通など大手ITベンダーが注力する分野で、菅義偉政権もデジタル庁設置などの取り組み強化を打ち出した。IDCでは、2020年の世界市場規模を1兆3000億ドルと試算。前年比では10%増で、19年の同18%増に比べ伸びは鈍化するが、統計対象の全19業種でプラスとなっている。「コロナ禍の影響で世界中の企業が設備投資を絞る中にあっては、底堅さがうかがえる」とIDCの敷田康リサーチマネージャーは指摘する。
日本での調査では、コロナ禍でもDX投資を拡大したり変えなかった企業は6割。一時的な見合わせが3割で、完全に投資を凍結した企業は5%程度に限られた。世界の企業も同様の傾向にあるという。コロナ禍はDX投資に一定の影響は与えたものの、将来を見据え、非接触やリモート業務への投資は必要との認識を企業は持っているとみられ、IDCでは、19―24年の5年間の平均成長率は15%程度と、成長の継続を予想している。
コロナで投資に2極化、「DX格差」の恐れも
もっとも、コロナ禍で業種や企業によってDX投資姿勢に2極化が生じてきており「DX格差」につながる恐れもあるという。経営が苦しく投資を控えざるをない企業がある一方、財務が強靭な企業はコロナで行動が制限される今だからこそデジタルに投資するという動きもある。「余裕のある企業はDXによる効率化が進む一方、投資できない企業は後れを取っていく」(敷田氏)構図だ。
業種別では、観光や宿泊、旅行業を含むサービス業や、鉄道・航空など、人の移動を伴う業種はDX投資の勢いが削がれているのが目立つという。素材分野は上半期の自動車減産の影響を受けた鉄鋼や、航空機の発注減が響く炭素繊維の分野で、DXも抑制気味になったようだ。
消費者向けでは、レストランなどの外食でDX投資が大きく落ち込んだ一方、ドラッグストアやスーパーでは電子商取引(EC)の投資を進め、逆に売り上げを拡大している企業もある。コンビニエンスストアでは、都心部の特定の店舗で無人化実験が始まっており「来年から再来年にはかなり広がりを見せそうだ」(敷田氏)という。