最新記事

自動車

韓国・現代自動車がEVシフト本格化 テスラ追撃には大きな障害も

2020年8月3日(月)06時00分

韓国の現代自動車は、早くから水素を使う燃料電池車の開発に携わってきたが、その間に米電気自動車メーカーのテスラが急速に台頭し、韓国国内を含む世界全体のEV市場を席巻していく姿を目の当たりにしてきた。そして今、テスラの牙城に、現代自動車が積極攻勢を仕掛けようとしている。写真は現代自動車のロゴ。英ミルトン・キーンズのショールーム前で5月撮影(2020年 ロイター/Andrew Boyers)

韓国の現代自動車は、早くから水素を使う燃料電池車の開発に携わってきたが、その間に米電気自動車(EV)メーカーのテスラが急速に台頭し、韓国国内を含む世界全体のEV市場を席巻していく姿を目の当たりにしてきた。そして今、テスラの牙城に、現代自動車が積極攻勢を仕掛けようとしている。

現代自は、来年と2024年にそれぞれ1本ずつEV専用の生産ラインを導入する計画であることが、同社労組内のニュースレターをロイターが確認して分かった。

また、現代自の実質トップ、チョン・ウィソン首席副会長は5月以降、バッテリーなどEV向け部品を製造するサムスン電子やLGグループ、SKグループの首脳と会談を重ねている。

複数の業界筋の話では、この会談の目的は開発競争激化で需給がひっ迫している関連部品を現代自が確保することだ。サムスンやSKなどは、テスラ、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラル・モーターズ(GM)などのサプライヤーでもある。

現代自はロイターに、EV生産を効率的に拡大するため、国内のバッテリー供給先と協力していると認めた一方、専用生産ライン導入計画についてはコメントを拒んだ。

サムスン、LG、SKもコメントしていない。

こうした動きは、チョン首席副会長が2025年までにEVを年間100万台生産し、世界の市場シェア10%超の獲得を目指すと14日に表明したことを受け、実際に生産能力増強へと果敢に取り組んでいる表れと言える。

ただ、目標までの道のりは相当長い。LMCオートモーティブのデータに基づくと、現代自の昨年のEV販売台数は8万6434台だった。これはVWグループの7万3278台より多いものの、テスラの36万7500台には、遠く及ばない。

コダックのてつを踏まず

現代自のある幹部によると、同社から見て、テスラが高級車を生産していた段階では、懸念すべき存在ではなかった。だが、17年により価格が安い「モデル3」を発売した時点で、不安が高まったという。

現実の問題として、まだテスラに追いついた既存メーカーは出現しておらず、バッテリーとソフトウエア双方の技術でテスラの優位は揺らいでいない。

さらに現代自の場合、強力な労組がEV事業拡大にとって障害になりかねない。労組が心配するのは、ガソリン車に比べてEVの生産に必要な部品点数や人員が少なくなるので、雇用が脅かされるのではないかという点だ。現代自では、従来車の重要部品は内製化を進めた一方、EVの多くの部品は外注化しているという事情も影響している。

このため労組側は、EVの主要部品も内製化し、自社で組み立て作業をするべきだと要求。労組の広報担当者はロイターに「われわれはEV事業自体に反対しているのではない。コダックは業界がデジタル写真に移行しているのに、フィルムにこだわり破綻してしまった。われわれは、組合員の雇用を守りたいだけだ」と強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中