最新記事

自動車

韓国・現代自動車がEVシフト本格化 テスラ追撃には大きな障害も

2020年8月3日(月)06時00分

既存メーカーの試練

2010年に現代自は韓国政府向けに230台のEVを生産したが、充電設備が整っていなかったため、結局、これらのEVはソウル郊外の研究センターに「お蔵入り」となった、と当時研究開発を統括していたイ・ヒョンスン氏は語る。

韓国初の国産ガソリンエンジンの開発者として知られるイ氏が著した14年の書籍からは、EVはバッテリーのコスト高という面から「非現実的」で、クリーンエネルギー車としては燃料電池車の方が将来性は明るいと考えられていたことが読み取れる。

事実、現代自はトヨタ自動車やニコラなどとともに、早くから燃料電池車を支援してきた数少ないメーカーの1つで、13年には初の量産型「ツーソンFCV」を、18年にはSUVタイプの「ネクソ」をそれぞれ市場に投入した。

しかし、燃料電池車は、今になってもあまり普及していない。LMCオートモーティブによると、昨年世界全体で販売された燃料電池車は7707台にとどまり、EVの168万台に大きく水を空けられている。

現代自のお膝元である韓国市場でも、テスラの6月の販売台数が最高を記録し、モデル3の売れ行きは現代自の「コナ」やBMW、アウディのEVを寄せ付けなかった。

消息筋はロイターに「現代自は、テスラがこれほど素早くEV市場を支配するとは想定していなかった」と打ち明けた。

そこで現代自は、燃料電池車の宣伝に人気歌手グループ・BTSを起用しつつも、2025年までに最大2車種しか発売する予定がないのに対して、EVは23種類も投入する構えだ。

もっとも新興EVメーカー、米ルシッドのバイスプレジデントで、かつてテスラやフォード・モーターでも働いていたピーター・ハセンカンプ氏は、既存自動車メーカーには電動化に際して、過去から続く「慣性」という試練に直面すると指摘する。

ハセンカンプ氏は、ロイターに「われわれがシリコンバレーを拠点とする理由の一部は、ソフトウエアと電子的な設計技術の専門性を活用することにある」と説明。大手自動車メーカーがこうした技術がうまく機能する方法を習得するには数世代の時間が必要で、彼らが思うよりもハードルはずっと高いとも語った。

(Hyunjoo Jin記者、Joyce Lee記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・がんを発症の4年前に発見する血液検査
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に


20200804issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、10日に有志連合首脳会議を主催 仏

ワールド

中国商務相、ロシア経済発展相と会談 経済・貿易を巡

ワールド

ブラジル大統領、トランプ関税を非難 プーチン氏との

ワールド

米中、一時的関税停止の可能性 週末の高官協議=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中