最新記事

日本経済

新型コロナウイルスがあぶり出した「中国依存」 国内回帰阻む少子高齢化の呪縛

2020年5月1日(金)17時24分

新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車をはじめとするサプライチェーンからマスク、消毒液といった衛生製品に至るまで、日本企業の中国依存の深さをあぶり出した。写真は都内で4月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車をはじめとするサプライチェーンからマスク、消毒液といった衛生製品に至るまで、日本企業の中国依存の深さをあぶり出した。中国の生産・輸出停止の影響は大きく、政府は緊急経済対策で、生産の国内回帰等を支援する予算措置を講じたが、そうした動きは現時点で一部にとどまっている。自動車や電機など、日本企業の生産体制を変えていくにはいくつかの障害も見えてきた。

必要な医療資材も中国依存

新型コロナの感染が拡大するなか、マスク、消毒液、医療用防護ガウン、人工呼吸器と、次々に必要な物資の不足に見舞われた。

8割を中国からの輸入に頼っていたマスク。国産を増やそうとしても、マスクに使用するゴムや不織布は、中国からの輸入が多くを占めていた。消毒液は国産で十分増産できると見られていたが、プッシュ式のボトルは中国からの輸入に頼っていた。

日本の輸入全体に占める中国の割合は、2000年の14.5%から2019年には23.5%に高まっている。中間財の輸入に占める中国の割合をみても、米国の16.3%、カナダの9.2%を引き離し、先進国のなかでは、日本が21.1%と最も高い。

「強靱な経済構造を構築する観点から、必要とされる製品や部材、素材については、単なる価格競争だけで左右されない、安定的な供給体制を整備することが必要」(梶山弘志経済産業相)との認識から、政府は、緊急経済対策で生産拠点の国内回帰やASEAN諸国への多元化を打ち出し、4月30日に成立した2020年度補正予算に2486億円を盛り込んだ。生産拠点を国内に回帰させる場合、中小企業は費用の3分の2、大企業にも2分の1を補助する。

この制度を活用し、生産拠点を日本に設ける動きも出てきた。アイリスオーヤマ(仙台市)は、投資総額30億円で、6月に稼働予定の宮城県角田工場のマスクの生産能力を当初計画の月6000万枚から月1億5000万枚に増強する。また、マスクで使用する不織布についても、中国からの供給に頼らず、同工場内に資材設備を導入し、内製化率を高める。

業界関係者によると、マスクに関しては、世界中で需要が高まり、中国の不織布の価格が高騰するなど、コスト面からも国内製造に向かいやすい環境になっている。また、マスクの製造ラインは複雑なものではなく、クリーンルームなど衛生的な環境があれば、比較的容易に製造が可能だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「北朝鮮問題は解決可能」、金正恩氏と良好

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦「1週間以内に実現可能」

ワールド

イラン、IAEAの核施設視察を拒否の可能性 アラグ

ワールド

「トランプ氏の希望に応じる」、FRB議長後任報道巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中