最新記事

感染症対策

フィリピン金融市場、新型コロナウイルス対策で取引停止 アナリスト「複数の株式市場が閉鎖される可能性」

2020年3月17日(火)17時53分

フィリピン証券取引所は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トレーダーや従業員の安全確保のため、取引を無期限で停止した。写真はマニラで2016年2月撮影(2020年 ロイター/Romeo Ranoco)

フィリピン証券取引所は17日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トレーダーや従業員の安全確保のため、取引を無期限で停止した。外為市場と債券市場も取引停止となった。

ドゥテルテ大統領が新型ウイルスの流行抑制に向け、大規模な隔離政策を打ち出したことを受けた対応となる。

金融市場が全面的に休場となるのは、新型ウイルス対策としては世界で初めて。外為市場の取引は18日に再開される。

アナリストらは他の株式市場も、この動きに追随する可能性があるとの見方を示している。

キャピタル・エコノミクスは17日付のリサーチノートで「これまでにないペースで株価が急落していることを踏まえると、状況が好転しなければ、近く複数の株式市場が閉鎖される可能性がある」と指摘した。

アドマクロの調査責任者、パトリック・ペレットグリーン氏も、フィリピンの措置が取られる前である週末に公表したリサーチノートで、同様の可能性に言及していた。

同氏は「われわれは、これまでにもそれを目にしてきた。また起きると思う」とし、「各国政府は現在、追加のストレスや障害を望んでいない」と語った。

ただ、キャピタル・エコノミクスは、そのような措置には投資家心理を改善させる効果はないとし、他の市場も取引を停止するのであれば、フィリピンと同様に健康上の理由になるとの見方を示した。

同社は「まれなケースで過去に米国で株式市場が閉鎖されたことがあるが、信頼感を回復するためではなく、通常は同時多発攻撃後など現実的な理由に限られてきた」と指摘。「投資家は早急にキャッシュが必要なら、ほかに売ることのできるものを何でも売ろうとする可能性がある」とし、取引停止が信頼回復の手段として機能しない可能性に言及した。

16日のマニラ株式市場の主要株価指数<.PSI>は8%急落した。3月に入ってからの下落率は20%に達し、すでに2008年10月以来最大の下げとなっている。

フィリピン証券取引所は16日の発表文書で「新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、従業員とトレーダーの安全を確保するため、今後通知するまで証券取引所の取引を停止する。清算・決済業務も行われない」とした。

株式市場を取引停止とすることが市場センチメントを支えるか否かについて、意見は分かれている。

DBP‐ダイワ・キャピタル・マーケッツ(マニラ)のアナリストは、取引停止となったことで、投資家に売りの判断が正当化されるかどうか検討する時間を与えると指摘。

一方、取引が再開された際のボラティリティを増幅させ、政府が債券市場で資金調達することが困難になる可能性がある、との声もあった。

[シンガポール 17日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・新型コロナ「不都合な真実」をあなたは受け入れられるか
・中国、新型コロナウイルス新規感染者が増加 北京など海外からの入国者の感染が原因
・日本が新型肺炎に強かった理由


20200324issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月24日号(3月17日発売)は「観光業の呪い」特集。世界的な新型コロナ禍で浮き彫りになった、過度なインバウンド依存が地元にもたらすリスクとは? ほかに地下鉄サリン25年のルポ(森達也)、新型コロナ各国情勢など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長は「大幅利下げを信じる人物」=トラン

ビジネス

金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべき、適切な

ビジネス

中国の若年失業率、11月は16.9%に低下

ワールド

米大統領3期目、憲法は「不明確」 弁護士がトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中