ESGは投資における紙製ストロー? ヘッジファンドが空売り狙う

環境や社会問題、企業統治への取り組みの積極性をうたい、世界の投資資金を取り込んでいる「ESG企業」に対し、ヘッジファンドが空売りを仕掛ける機会をうかがっている。写真は各国紙幣。北京で2016年1月撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)
環境や社会問題、企業統治への取り組みの積極性をうたい、世界の投資資金を取り込んでいる「ESG企業」に対し、ヘッジファンドが空売りを仕掛ける機会をうかがっている。
株価の動きと逆張りをすることでしばしば悪役にされる空売り筋のヘッジファンドがこうした動きに出るのは、ESG企業に対するあいまいな株価評価に利ザヤ確保のチャンスをかぎ取っているからだ。
ESGについては、企業の自己PRで過度に株価がかさ上げされていたり、事業の展望を損ないかねないリスクが覆い隠されているケースも少なくない。
そうした情報ギャップを利用しようとする空売り筋の動きは、ESG企業の持続可能性をどこまで信用できるのか、正確に見極める方法はないのか、という投資家が直面する複雑さを浮き彫りにしている。
見せかけの環境配慮
気候変動や経済的不平等に対する懸念が社会一般でも政治の世界でも高まっていることを背景に、利益を上げるだけでなく、より大きな責任を引き受けていることを示すよう企業に求める圧力は高まっている。
ESG投資の統計を手掛けるグローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(GSIA)によると、「持続可能」と定義される投資は世界の全運用資産の4分の1余り。ESGを喧伝する企業を同業他社よりアウトパフォームしているとするアナリストリポートを追い風に、この分野への投資額は約31兆ドルに達している。
一方、マディー・ウォーターズのカーソン・ブロック氏、アップルシード・キャピタルのジョシュ・ストラウス氏、モーフィック・アセット・マネジメントのチャド・スレーター氏など空売り投資家の一部は、持続可能性に関する企業の不実表示、いわゆるグリーンウォッシュ(うわべだけの環境配慮)が株価を押し上げている可能性があると主張する。
モーフィックのスレーター氏は「今やグリーンウォッシュが絶対的に蔓延している。空売り筋の立場からすれば、これは非常に興味をそそられる状況だ」と述べた。